世界が違う

□見えないトリガー
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風間sid



迅から聞いた近くに来る人型近界民

単体で門を潜り、黒トリガーを使っては誰かを探していると言う

全く矛盾した話だ

だが一番重要なのはそこではない

ソイツの前では緊急脱出が使えず

氷月さんが5割の確率で死ぬと言う

玉狛で放置しておけば迷わず戦場へ向かうと言った迅の言葉に俺も太刀川も三輪も嵐山も冬島も納得し

今日から本部の個室で過ごすと言う

A級の隊長だけが会議を終え、真っ直ぐ隊室に戻った

『お疲れさん。蒼也』

隊室に戻れば氷月さんの膝枕を堪能している三上が寝ていた

風間「菊地原と歌川は何処行った?」

『菊地原君はメディカルセンター、歌川君は付き添いで行ったぞよ』

風間「そうか」

そう言われれば今日は菊地原の健康チェックだったな

副作用を持っている人物は常日頃ストレスを感じている

そのためにメディカルセンターは月に1回ほど健康状態をチェックし

少しでも異変があれば任務が減ると言う

風間「氷月さんはいいのですか?」

『我?我は大丈夫ぞよ。もう慣れておるし、何より此処がダメになっておる』

自らの心臓に手を当てる

示されているのはトリオン供給器官

風間「...太刀川から聞きました。まだ回復の見込みがあると」

『おしゃべじゃな、慶は』

膝で眠る三上の頭を撫でながら、優しく微笑む

その表情は昔の迅のような、貼り付けた笑みだ

風間「俺はあなたに長生きしてほしいです。守って貰った分、今度は俺達が守ります」

『お前さんが優先するのは自分の命じゃ。次に隊の子や家族、親戚、友達。我はその後でええよ』

お前さん達は似とるなー、と呑気な事を言う

そんな事は分かっている

家族、友人を守るのは当たり前だ

だが俺は助けて貰った恩を返したい

風間「迅から未来について聞きました。あなたは何処にトリガーを隠し持っているのですか?」

『......』

一瞬だけ目を見開いた

と言う事は、手元にある

あるいは何処かに隠している事が明白だろう

『持っとらんよ。何処にもな』

風間「申し訳ないですが嘘はいけません。今、あなたの表情が一瞬だけ変わりました」

『!、はぁ、本当に持って居らんのじゃ。信用がないな』

風間「分かっています」

『本当に持ってはおらん。持って居ったら既に君達に没収されているはずだ』

そう言われれば引き下がるしかない

確かに、持ち物検査をした時

あれ以外はトリガーはなかった

「ない」と言う証拠が多すぎる

監視役として四六時中べったりとひっついていた迅が見落とすわけもない

風間「嘘だったら、分かっていますよね?」

『処分はいくらでも受ける気じゃよ。さて、三上さん、狸寝入りはそこまでじゃ』

風間「!」

三上「見つかっちゃった」

ブランケットを下げながら三上はソファーに座ると大きな欠伸を1つ落とした

『目覚めはどうじゃ?』

三上「最高でした」

『ほか、さて、我は行くな』

立ちあがった氷月さんは両手を天に突き出すように伸びれば

背骨の辺りが少しだけポキポキと鳴った

三上「もう少し...」

『すまんな。外で待っておるから可愛そうじゃけんよ』

扉の前に立てば聞き耳を立てていた菊地原と申し訳なさそうな表情をしている歌川がいた

菊地原「あれ?なんで此処にいるの?」

『三上さんが我を呼んだんじゃよ。暇じゃからってな』

菊地原「ふーん」

歌川「すいません、菊地原が」

『ええよええよ。菊地原君が本当は優しい事を知っておるからな』

氷月さんの言葉に、菊地原は表情を歪めそっぽを向く

『歌川君も大変じゃな。適度に休憩を取って頑張ってくれな』

歌川「はい」

『じゃあのー』

隊室から出て行った氷月さんの後ろ姿に

俺は何処か調子が悪いように見えた

菊地原「風間さんが白川さんと何を離していたかの内容は知らないけど、あの人の心音、変でしたよ」

風間「...そうか」

菊地原「何かあったんじゃないですか?」

三上「?」

菊地原の言った言葉に俺は自分でも珍しく反応してしまった

風間「何処から聞いていた」

菊地原「...「トリガーを何処に隠し持っている」からですよ」

風間「そうか。皆にも伝えるが...」

先ほどでの会議を皆に伝える

近いうちに人型近界民が来る事

その人型近界民と氷月さんが戦って死ぬ未来がある事を

三上「だから今日から本部での寝泊りなんですね」

風間「あの人は放って置くと何処に行くか分からない。監視の迅は毎日来るにしろ防衛任務で来れない場合はA級の何処かが監視する事になった」

菊地原「はぁ、めんどなー」

歌川「おい」

24時間とは言わないものの監視までつく

迅はそれ程までに大切だと思い、失いたくないと思っているだろう

それは俺も太刀川も嵐山も、三輪も同じだ

戦闘員としての先輩でもあれば、剣術を教えてくれた師匠でもある

俺が氷月さんを守りたい理由はこの街を見てほしいからだ

俺達とあの人が守った、この街を
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