世界が違う

□探し者
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迅sid



検査やらリハビリ等で退院したのは俺が目覚めて1週間

そして、俺の恋人がいなくなって2週間が経ち、残り4日だ

今日も警戒区域で彼女の痕跡を探す

クレーターが出来た場所

少女の腕が発見された場所

黒トリガーの破片を見つけた場所

何処を探しても氷月の痕跡はない

迅「いない、何処に行ったんだ...」

今度こそ彼女は本当に死んでしまったのかもしれない

それなら黒トリガーになると言っていたのでクレーター周辺を探すも何も見つからなかった

空閑「迅さん」

迅「遊真...」

市街地を探していれば後ろから可愛い後輩が声を掛けてくる

目覚めて暴れて数分が経ったのち

遊真は氷月を俺の病室で見て会話をしたらしい

その証拠に、俺の近くに彼女の携帯が置いてあった

中を覗けば隊員達からの通話履歴で埋め尽くされ、それだけ彼女は愛されている事が分かる

そして

空閑「「空が綺麗だった」場所。見つかった?」

迅「いや、全然だ」

彼女が残した言葉に忠実に従えば、色々な場所が挙げられるも

俺と一緒に行った場所なんか限られてくる

屋外だと思った俺はすぐさま警戒区域の全てを見に行って1日消費

三門市と言う事で警戒区域の外に行ってすれ違う人の未来を見て2日分消費

そして今日、俺は警戒区域の住宅街であり

氷月と行った場所をしらみつぶしに探している最中だ

空閑「空が綺麗って言っても、何処も綺麗じゃないのか?」

迅「場所によっては人口の光がない夜空の下なんかも綺麗になるよ」

空閑「ふむ、そうなのか。今度見てみよう」

今日は一日曇っているために綺麗な空が見えない

だが、何かが引っかかってしょうがない

空閑「ん?雨か」

迅「勝手にお邪魔しよう」

近くにある民家へと入り、埃っぽいソファに座る

空閑「おー、すっごい埃だ」

迅「此処はボーダーで出来てからすぐに警戒区域に設定された場所だからね。軽く5年は使われてないよ」

空閑「そうなのか」

迅「ちょ、遊真、埃が...」

空閑「すまない迅さん。意外と楽しかったからな。座ると見えない所から埃が出て面白いんだ」

迅「それ、人前ではやっちゃいけないぞ。中にはアレルギーの人もいるからな」

空閑「あれるぎー?」

アレルギーの説明をしている最中にも、何かが引っかかる

何処か見下ろしている

何処か勘違いしている

何処か気づけていない

何処か分からないまま遊真への説明を終え、リビングの窓ガラスから外を見た

そして



『綺麗な空じゃな』



迅「え...?」

俺の頭の中に何かがよぎる

それは雨雲を見ながら氷月が言った言葉だ

空閑「迅さん?」



迅「雨降ってるのに?」

『ああ、全部洗い流してくれそうじゃなか?』

迅「俺は嫌いだよ。だって自由に外に出れないもん」

『ガキンチョらしい理由じゃな』

迅「ガ、ガキじゃないもん!」

『じゃが忘れんでくれ。我がそう思ったんは...』



窓ガラスに映る俺の目

それは彼女から言えば綺麗な空だと言った

そうだ、俺はとっくに答えを知ってたんだ

なのに、どうして、気づけなかったんだ

空閑「迅さん、どうしたの?」

俺の隣に立つ小さな後輩

真紅のように赤い目はルビーのようにも見えなくはない

迅「多分、分かった」

空閑「それで?迎えに行くの?」

迅「当たり前だよ。俺の大切な恋人だし。俺の命の恩人だ。2回も助けてくれた。今度は、俺が守る」

電話を取り出し、ボスへと連絡する

林藤【どうした迅?何かあったか?】

迅「氷月さんが前に住んでいたアパートって何処?」

林藤【そこにいるのか?】

迅「確定じゃないけど、もうそこしか考えられない」

林藤【そうか。宇佐美ー】



小さい頃、此処に居たのを思い出す

宇佐美からのナビで俺はようやくたどり着いた

雨が降っている昼間

空閑「俺はここで待ってるよ」

迅「そうか。分かった」

会談の登り口で分かれ、茶色く錆びてしまった階段を上る

一番奥の角の部屋

ドアノブは周り、ドアを開ける

迅「ごめんね。氷月」

玄関にある彼女のを靴を見て、少しの安堵を覚え

俺のブーツを脱ぐ

既にトリオン体を解除しているために、夏のジメジメとした空気を見に纏いながらリビングへとたどり着いた

そこはもう、俺の記憶にある過去の部屋ではない

あの後、誰かが此処に入居し

此処ももう5年使っていないだろう

ソファの上には救急箱が乗っている

それを見て、嫌な感じがして

迅「氷月」

彼女の名前を口にして、寝室の扉を開けた

少し鉄臭い部屋の中、ベットの上には

外の窓を見ながら仰向けに寝ている彼女の姿を見つけた
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