大好きな... old

□新しい春
1ページ/6ページ




「なんでやってんだよ!」

「早くやめろよ!」

「お前なんか!」

「「死ね!!」」






『......』

朝の目覚めはいつも通り

ベットから起き上がり辺りを見ると何時もと違う部屋

そうだ、昨日引っ越したんだったと思い出し

ベットから立ちあがった

ベランダの窓を開けると春の爽やかでほんのり甘い風が入ってきた

『準備しますか...』

誰もいない部屋に自分で言い聞かせ

新しい台所に立って朝食の準備をする

ピンポーンとインターホンが部屋に鳴り響き

朝食を作る手を止めて玄関に向かった

『どうぞ』

風上「よ!」

重く少し錆び付いた扉を開けると

そこには昨日まで同居していた1つ年下の男の子が立っていた

『朝練はいいのですか?』

風上「朝食、食いに来た!」

元気に入って靴を脱ぎ、リビングに進んで行く

『わかりました。後、10分待っててください』

風上「おう!」

綺麗で柔らかい笑顔で返事をし

鞄をソファーに置いて自分も座った

彼は風上優真

近くの中学校に通う3年生

少し訳ありで彼の家にかなりの間お世話になっている

そして、今年から僕は高校生になるのでマンションで1人暮らしを始めた

彼の両親が僕を自立させるのではなく

彼の息子を自立させるために僕を離した

僕も此処から通えれば時間に余裕が出来るから良い話だと乗ってしまった






『僕はこっちですので』

風上「氷月、学校わかるのか?」

『引っ越しの後に少し行きましたので』

風上「そっか、うん!気をつけてな!」

『そちらも』

彼の通う中学校の交差点で別れて僕は高校に向かった

通学路には同じ制服を着た人は1人も見なかった

それもそうだ

今日は僕が通い始める立海大高等学校の入学式であり

朝の部活動はなく、どこの部活も午後からだと言う

風上の通っている立海大中学校の入学式は1週間後であり

今日は部活動に向かって行った

学校に着いたのはいいが、会場入りが2時間後であり

教室発表は入学式が始まる30分前

余裕がありすぎる

持ってきた鞄の中身には筆記用具と読書用の本しか入っていない

広い正門を潜り抜けて校舎に向かうも

昇降口の扉すら開いていない

仕方ないから辺りを見るために散歩をしてみる

此処の高校は敷地内に多くの桜の木が生えている

今日は天気がいいし桜も満開とまではいかないが

かなり綺麗に咲いている

校舎の裏へ行けばこの学校で見た一番大きな桜の木が立派に咲いていた

木の下には申し訳ない程度にベンチが4つ置いてある

僕はそのベンチに腰掛けて真上を見た

真っ青な空を背景に日の光で色を変える桜の花は美しかった

視線を元に戻して制服のブレザーのポケットを漁る

そこから音楽プレイヤーとイヤホンを取り出し曲を聞く

どの曲もオルゴールにカバーされたものであり

優しい音色が頭の中に響いた

次に鞄を漁って読書用の本を取り出してそれを読み始めた

頭を使うミステリー小説は読んでいて楽しい

何処に何が隠されているのかを予測するのが僕の楽しみだ

携帯のアラームで教室発表が出される5分前に設定して本を読みふけった
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ