大好きな... old

□時期
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ザー、と音を立てて外には雨が降っていた

『......』

夜中の2時

雨の音で目が覚めて、ベランダに立ってば雨を眺める

真夜中の、街灯しかない街並みに黒い雨がしみ込んでいるように見えた

『......』

雨が降ると眠れなくなる

自分の中にある別の記憶が

僕の睡眠を妨げてくるからだ

明日から学校がまた始まる

6月の梅雨の時期、僕はこの時期が苦手である

何故と言われれば良く分からないが

取りあえず夜が眠れなくなるからだ

『寝ますか...』

ベランダのカーテンをしっかりと閉め寝室に入った



「それで、アイツらはどうするんだ?」

「いい値で売れそうだけどな」

「だが、ファーストだけは放しがたい」

「ああ、アイツはあの中では最強だからな」

中年男性の低い声が聞こえた

裸足の裏からは冷たいコンクリートが体温を奪い

雨のせいで地下は湿気と極寒になっていた

寒い中、半袖半ズボンに毛布が1枚

僕は毛布を羽織りながら部屋中を歩き回っていた

この部屋にあるのは、鉄格子の窓と鉄の重い扉だけ

他の物は存在しなかった

「ファースト...」

「何?」

「今がチャンスだ。今夜大人達は街へ出て行くからな」

「わかった、皆にも準備を」

「わかってる」

そしてその後に、建物の中では大きな音が鳴り響いた

銃声、悲鳴、断末魔、これらが意味している事は何もわからない



『!!』

意識が急に覚醒すると上体を勢いよく起こした

辺りは少しだけ明るくなっていた

それでも時計を見れば6時前

体中からは汗が絶え間なく流れ

自分の中は異常に早い鐘が脳を刺激し

肩を上下させるほどに息を切らしていた

『はぁ...はぁ...はぁ...』

口内に溜まった唾を飲みこむのも忘れるくらいに

肺に酸素をひたすら取り込んだ

暫くすると呼吸と心拍が落ち着きを取り戻した

ぼーっとする思考で考える、何を見ていたのかを

実際、起きればどんな夢を見ていたかなんて忘れてしまう

梅雨の時期になると何時もこうだった

訳のわからない夢を見て、それに驚いて跳び起きる

『っ...』

こめかみに鋭い痛みが一瞬だけ通った

睡眠不足から来る頭痛だろう

布団から出てシャワーを浴びた

6時を過ぎてからベランダのカーテンを開けると雨はまだまだ降り続いていた

このまま行けば、僕の体は何処まで持つものだろうか

足に重りが付いているのではないかと思うくらいに体が重い

食欲も特に出ないので、昼ご飯用の梅干し入りおにぎりを1つ作っては

サランラップで包んで鞄の中に入れた

水筒に教科書、筆箱、ノートを詰め込んでから

テレビを付けた

「今日は全国的に雨が降ります。今週1週間の予報です」

お天気キャスターの台詞と同時に神奈川の天気予報を見た

『......』

どうやら、1週間全てが雨の日だそうだ

いつかは体調不良で休むかもしれないな

そう思いながら暖かいコーヒーを淹れ

時間を掛けながら飲み干した

制服に着替え、鞄の中身を確認してから

マンションの部屋に鍵を掛けて外に出た






仁王sid

幸「遅いね...」

「「......」」

俺達は命の危機が迫っておった

朝練に姿を現さない白川は俺達に連絡を入れる訳でもなければ

俺達から連絡する方法すらないんじゃ

アイツの携帯番号を知ってるヤツは...

柳「赤也、いいか?」

中等部におる風上だけじゃった

それの事について参謀が赤也に連絡を入れておた

丸「なんで、来ないんだ?」

ジャ「俺に聞くなよ」

柳生「仁王君は何か知りませんか?」

仁「知らん。何時もより騒がしかったのは覚えておる」

今日は一晩中、隣の部屋から物音が絶えんかった

ガタガタと聞こえる訳でもなければ

小さな物音だけじゃった

気になっておったが俺はそのまま寝て

朝練に遅刻しんように家を出た

丸「虫でも来たんじゃねーの?」

仁「それだったら、もっと騒がしいはずじゃ」

真「時間に遅れてくるなど、たるんどるっ!」

筋トレのために体育館の隣にあるトレーニング室で基礎体力作りをする

雨が降っておると屋内テニスコートで練習するのだが

1年生の内は基礎体力作りからでトレーニング室に入る事が殆どじゃった

柳「フム、わかった」

連絡をとっておった参謀が戻って来た

幸「それで?」

柳「優真に聞いた所、どうやら寝坊したらしい。雨で交通が混雑しているために間に合わないそうだ」

幸「そう、か。フフフ...」

いかん、マジで俺達の命が危ないぜよ

朝練中は幸村の機嫌が治る事無く

ホームルームが始まった

俺はまだ死にとうないぜよ
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