大好きな... old

□猫
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白川sid

流石にハードルが低すぎただろうか

自分で設定したのにも関わらず、少しだけ後悔をしている

風上「赤点回避したぜ、アイツ」

『分かりました」

今日は水曜日、どうやら優真達のクラスは午前中に英語のテストが返され

丸井君の方も4つも平均点を超えていたら話さないといけない

正直、精神的なダメージはまだ残っている

しかし、何時かは誰かに話さないといけない

仁王君だって少しは気づいているし

『はぁ...』

お昼休みの時間に屋上で優真との通話を切る

今此処には誰もいない

扉の上の日陰の部分、給水タンクにもたれ

右手は無意識のうちに首元に寄っていた

『あ...』

そうか、今はマフラーをしていないんだった

中学の時は毎日のようにしていた覚えがある

それを見た彼女はもう1つ、全く同じマフラーをくれた


「ちゃんと洗ってね!」


洗うのも惜しいくらいに毎日身に着けていた

首の辺りがスースーしてなんだか鳥肌が立つ

さて、問題は、だ

何時話すか、だな

何時でもいいとはいかない

まだ心の準備も出来てないし、どうせこれから起こる事は分かっている

世の中の人間、最後は皆一緒なんだ

国と国との境目を通り過ぎても、時間が過ぎても

どうせ一緒なんだ、優真さえ守れれば

僕は何もかも捨てても構わない

彼女は元気に過ごしているだろうか

?「此処に居ったんか」

『......』

錆びた金属の扉が開かれた

中から現れたのは予想していた人物の

銀の髪をした詐欺師、仁王君だ

彼は静かに扉を閉めると僕の隣に座った

何も言わないまま午後の授業が始まる予鈴が鳴り響いた

5分後には本鈴が鳴り響く、その前に席に付かないといけない

隣に座っている彼に気遣う事もなければ、その彼の前を通り過ぎて扉に向かう

『...!』

仁「......」

彼の前を通り過ぎようと壁から離れた瞬間、彼は無言で僕の手首を捕まえていた

何が目的なのか分からないが、あの時の事を此処で吐かせるような事はないだろう

中々放してくれない、これは一体どういった感情なのか

優真の母親が見ていたドラマのシーンを思い出せば「行かないでほしい」と言う事か?

取りあえず、これが当たっている訳でもなければ僕は彼が放してくれるまでは此処から立ち去る事は出来ない

僕は半ば諦めながら、彼の隣に座った

仁「!」

彼は驚いたような反応を見せた

僕はパーカーのポケットから優真のオススメしてくれた○撃文庫でも読んでみるか

栞を取り出してポケットにしまい込む

この主人公は魔法学校に通っている男の子だ

実技は悪かったために下の位に落とされたが、それでも知識は上の者との差を出している

感情がたしなみ程度しかなく優真曰く


風上「最強設定は似てるよ!」


とだけで押し付けられた

読んでみると意外と頭を使わされる

C○Dとかの説明もそうだが、科学の事も入っている

魔法なのにと思った時代が懐かしい

ふと本鈴が学校中に響き渡ると、手首を拘束していた手が緩んでいた

そのまま彼の頭は僕の肩に乗った

『...はぁ』

隣の人を見れば、かなり熟睡しているように見えた

今日も朝からハードだったから仕方がないと思ってしまう

1週間ぶりの部活は体力が落ちていないか筋トレや持久走ばかりを繰り返している

今日の午後からようやく打ち合いが始まると部長が言っていた

暑さが弱い仁王君はかなり体力を削られているように見えていた

いくら日陰で眠っていても体温は低下していく

彼の頭を自分でも器用にと思うくらいに程度に避けてパーカーを脱ぎ、彼に被せる

彼が起きるまでは此処にいよう

何故が彼が隣に居ると、胸の苦しい部分が緩和されるから

もう少しだけなら、甘えてもいいだろうか
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