大好きな... old

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白川sid

自分の部屋に入る前

仁王君は僕の手を繋いで自分の部屋を開けた

彼は着替えを持って行くそうなので僕は自分の部屋でも掃除しようと思ったが

彼が強く握りしめるから付いて行く事にした

仁「待っとってくれ」

『はい』

寝室の目の前で彼と別れ、僕は空いているソファーに座る

もうすぐで夕日が見える

この階で見る夕焼けは美しい

空が茜色になり、白い雲が赤みを帯びていく

..........

刺されて死ぬ、か

なんかどうでもいい

人間、いや生物なんて生きていれば必ず死は訪れる

事故死に突然死、病死もあって寿命を迎えて死ぬ事もある

人に殺されたり、自然災害に巻き込まれたり

自分で死んだり、中毒で死んだり

色々あるものだ

死ぬのが怖いか?

と聞かれれば、正直分からない

でも、どちらか答えろと言われた場合は

怖くない、と答えると思う

理由は1つだけ

本当に死にそうになったのを体験しているから

それだからこそ、死を恐れる人が大半だと思う

だが、僕は異常者だ

思考も常識も何もかもが普通ではない

恐怖、悲しみ、怒り、欲もなければ

楽しさ、嬉しさも分からない

相手が微笑んでいるからそれに合わせるだけ

相手の表情、態度、目を見れば簡単に分かる

それだけの事

でも、死にたい、とは思わない

不思議と生きたいと思っている

何故、生きたいのか、分からない

多分、優真や優真の両親へのお返しがあるのは分かっているが

それよりも大きな理由があると思う

何だろう

すごい単純だった気がする

仁「氷月、お待たせ」

『あ、仁王君』

後ろから声が聞こえ、考えていた事を放棄して首だけを彼の方へ向ける

仁「...迷惑、じゃよな」

『大丈夫です。僕もかなりの迷惑を掛けましたので、お返しをさせてください。僕に出来る事であれば何でもしますので、ご遠慮なさらないように』

仁「すまんな」

『そのセリフ、聞き飽きました』

仁「...ありがとさん」

『はい、行きましょう』

仁「そうじゃな」

ソファーから立ち上がり、彼の隣に立つ

仁「大丈夫じゃ。俺の前を歩いても、じゃが」

『?』

顔を下に向け、若干頬が赤い気がする

熱でもあるのだろうか?

仁「手、繋いでくれんか?不安、なんじゃよ」

『いいですよ』

彼の差し出された手を握ると、それよりも少しだけ強く握り返された



夕食を終わらせ、彼がお風呂に入っている最中にさっきまで使った道具や食器を洗っていく

今日は一緒に寝ようと言われたので、私用は先に済ませておこう

一通りの物を洗い終え、拭いて戻して行く

テーブルを拭いて、寝室へ

入ればノワールとブランがお出迎えをしてくれた

『少し待っていてくださいね』

しゃがんで可愛い子猫の頭を撫でてから勉強机に向き合う

カバンから今日の宿題を出して進めて行く

途中、小さな物音が聞こえたので恐らくは仁王君が出てきたのだろうと予想する

扉の鍵も閉めてチェーンもした

だが、万が一の事があるかもしれないから寝る前にも確認しておこう

止まっていた手を動かしてペンを動かして行く

『?』

勉強机の端っこに置いておった携帯電話が震えた

開けてみると「幸村精市」から着信が来ている

『はい。もしもし、白川です』

幸「こんばんは、氷月」

『何か御用でしょうか?』

幸「仁王の様子はどうだい?」

やはり部員であり仲間である彼を心配した連絡だったそうだ

『暫くは精神が不安定になりやすかもしれません。今の所は大丈夫です』

幸「そうか、2人は今、何をしてるの?」

『僕は宿題を、彼はお風呂に入っています』

仁「なんじゃ?電話か?」

ノックもせずに入ってきたのは今の話をしていた仁王君からだった

『はい、幸村君からです。仁王君を心配した電話です』

仁「ほうか」

彼はさして興味がなさそうにベットへ腰かけ、子猫と遊び始めた

幸「...機嫌、悪くしたみたいだね」

『え?何の事ですか?』

幸「いや、何でもないよ。明日は学校を休んでも俺がしっかりと先生に言っておくから。1日で頑張ってね」

『分かりました。精一杯やらせていただきます』

幸「ふふ、ありがとう。じゃあね、おやすみ」

『おやすみなさい』

ピッ、と通話を終わらせるボタンを押して先程と同じ所に置く

仁「......」

『......』

仁「...入らんのか?」

『あと少しで...。いえ、今いってきます』

もう少しで宿題が終わるが、明日に回せばいいかもしれない

今は精神的に疲れている彼を休ませないといけないね
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