大好きな...

□1.プロローグ
1ページ/2ページ

氷月sid



夢を見た、それは小学生の時だ

熱い日差しの中、小さな体で体形にあったテニスラケット抱えながら走っていた

目的地は1つ、唯一の友人であり、テニスと言うスポーツを教え、それが楽しいと教わった人の元へ

学校から帰って、ランドセルと部屋に置いて

代わりに立てかけてあったラケットを抱えて飛び出した

毎日がつまらない日常を楽しくしてくれる

幸せのようなひと時だった



中学生に上がって父の用事で外国へ渡った

学校から帰ってテニススクールへと通っていた

多くの同年代の人が一心不乱にテニスラケットを振り、向かってくるボールを打ち返す

楽しかった

楽しかった

楽しかった

楽しかったんだ



『......』

春の日差しが部屋の中に溢れる中

僕は大粒の汗を掻いて覚醒した

ベットから見える天井がいつもと違う色と模様で一瞬だけ焦ったが

昨日、此処に引っ越してきた事を思い出して落ち付いた

『......』

ベットから起き上がってベランダへと向かう

寝室の南側に設置されている扉を開け、部屋の空気を入れ替える

春の花の甘い匂いが部屋へと訪れるのと同時にチャイムが鳴った

『...優馬。もう来たんですね』

寝室から出てすぐに玄関へと向かう

風上「よ!」

玄関の扉を開けると元気な姿と共に片手をあげて挨拶をしてくる

『おはようございます』

彼は風上優馬、昨日まで同居していた1つ下の中学三年生の男の子

元気で活発、授業は嫌いだけど体育などの身体を動かす事は大好きな子だ

風上「朝食は?」

『今から作る所です。優馬も食べますか?』

風上「食う!」

『では、しばらくお待ちください』

風上「おう!」

朝から元気な優馬は我物顔でリビングのソファに座るとテレビの電源を入れて今日の天気を確認してた

春先で朝はまだ肌寒いので風邪には気をつけてください、と新米お天気お姉さんが少しギコチナイ笑顔で言った



朝食を食べ終え、軽くシャワーを浴びてからマンションを出た

優馬と2人で歩きながら色々な話をしていると、それぞれの目的に分かれる交差点が目に入った

風上「場所は大丈夫?」

『ええ。引っ越しが終わった後に一度行ったので』

風上「さすが氷月!」

横断歩道を渡り終え、僕たちは解散する

優馬はそのまま前へと進み、僕は左に曲がった

歩いて行くと通学路には同じ制服を着た男女が増えて行き、目的地が近づいてくるとまた人数が増す

立派な正門が見え始める頃には、これまた大きくて立派な学校が見えた

それは高校生にしてみれば大きいのではないかと思うくらいの大きさ

人の流れに沿って向かう場所へと流れる

ついたのは白く背の高い掲示板

何も貼られてはいないが、皆が此処に集まるのは恐らくクラス発表だろうと予測する

クラス発表まで残り1時間10分

さすがに立って待つには1人だと辛い

散策ついでにお気に入りの場所を探したい

そう思った時の実行は早かった

足は自然と人の居ない場所へと導かれるように進み

気づけば人の声も聞こえない広場に来ていた

校舎裏にある小さい広場

広場の中心には立派な桜の木があり、その下には簡易なベンチが置かれてた



?「どうじゃ?楽しいじゃろう?」



頭の中に蘇る声

それは楽しそうで待ち遠しい声だ

朝見た夢の男の子の声であり、忘れてしまっている部分

僕には記憶がない

小学生以降の記憶が一切ない

あるのは今の両親から悲惨だと言われた中学の記憶だけ

ベンチに腰掛け持ってきた鞄の中から1冊の本とミュージックプレイヤーを取り出す

ヘッドホンをしっかりとさしてから優馬から教えてもらった自分のお気に入りの曲を流す

英語での曲なのに歌っている人や作詞した人は日本人だと言う

そしてこれまた優馬のオススメでアニメの小説を読む

ミュージックプレイヤーの方でクラス発表が始まる15分前に設定し、読みかけのページを開いて読み始めた
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ