世界が違う

□家族
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白川sid



最上「すまない、逃げろとは言ったが」

『ええんじゃ。我の親はそれがしたかったんじゃ。出来たんなら本望じゃろうな』

最上「そうか」

『おん』

アパートから出て最上さんの家を訪ねた

ボーダーと言う組織は圧倒的な人材不足であり

今では使われなくなった廃工場を多少改造して作戦やら何やらを立てていた

我の家族はみんなボーダー関係者

と言っても両親と兄と3匹の猫と我だけじゃ

今日はその3人が同時に死んだ

三門市の南

父は孤児院を守るために命を使い果たした

三門市の北西

母は友達を助けようとし、間に合わなかった事から感情的に暴れだして死んだ

三門市の中心

最上さんと行動していた兄は自身の力を慢心して突っ込んで逝った

兄は元からお調子者で一度褒めると本当に調子に乗る

母は精神的な病気で情緒不安定

父は我らを大切に育ててくれた

何となく今まで家族っぽい感じで過ごしてきた毎日が消えた日だった

城戸「どうするんだ最上。これ以上の被害は我々にとって存在意義が問われる」

最上「それも考慮したうえでの行動を練るんだ」

林藤「逆に俺達がいなければこの程度にすまなかったと、そう言うのは逆効果か」

忍田「どちらにしろ、人材が足りていない。今回の事で此方のダメージも大きい」

最上さんの家出のリビングではこれからの事を話していた

けど、我が気になるのはあのガキンチョの事だ

母親を失った心の病とかではない

彼から見たあの過去が忘れられない

我の副作用は「過去視」

相手の記憶を手繰り寄せる副作用だ

その代わりに膨大な情報が脳に入り込んでくるために強い偏頭痛が起こる

そしてあのガキンチョからはかなりの量の情報を貰った

今日の事、これから起こる事など

彼はもしかしたら我とは真逆の副作用を持っておるかもしれん

『あのさ、最上さん』

最上「?」

我の推測を混ぜた、今日出会って保護したガキンチョの事を話す

すると周りは驚き最上さんは私に提案をした



家に帰ってくると静かだった

足元には彼の靴があるのを確認した

『トリガー解除』

丸1日と言ってもいいトリオン体を解除して我が家に戻ってきた

テーブルの上にはしっかりとご飯を平らげた後があったが

『おらんな...』

リビングに着いても彼はおろか、猫の姿も見えん

我の自室の扉を開ければ、そこには我のベットで寒そうに布団に包まっておるガキンチョがおった

その傍らには猫も

彼の手は傷だらけであり、すぐさまリビングにある救急箱を取り出した

ベットに腰を下ろすとその反動で茶猫のブラウンが目を覚まし此方に来る

ブラウンは我の上に飛び乗り丸くなると大人しくなり

それは「撫でろ」と言う合図だ

ほんの少しだけ撫でてやり彼の傷ついた手を治療した

子供らしい柔らかな感触と綺麗な肌をしている

迅「ん...!」

消毒液が染みるようで眉間に皺を寄せていた

手早く終えて最後に包帯を巻いてやる

布団を引っぺがし他の部分を見ると足にも怪我をしていた

怪我の数だけ心はもっと傷んでいるだろう

治療を終え放ったらかしにしておったブラウンの相手をする

手袋を外しブラウンを撫でる

触れた相手から大量の過去のデータが脳に直接入り込んで来る

『ッ...!』

膨大なデータは寿命を縮ませると言うが、まさにそれかもしれない

今、呼吸をするのも苦しいくらいに過去のデータが入り込んで来るからだ

ブラウンの視点からの情報としては

彼は泣いていた

ご飯を食べながら、布団に入ってからもずっと泣いていた

声を殺して、涙を止めようと頑張っている姿が見えた

それを見た猫達は心配してすり寄る

するとガキンチョは少しだけヘラリと笑って猫をじゃれあいながら眠りについた

『そうか...、ブラウンようやった。お前さんの情報はかなり貴重じゃよ』

するとブラウンは我の上から飛び退いてまたガキンチョに寄り添うように丸くなる

迅「かあ、さん...」

彼の頭を優しく撫でると、はやりと言ってもええじゃろう

それは他の人とは比べ物にならないくらいに膨大なデータが脳を苦しませる

ついには呼吸の仕方を忘れそうになり体がドサリと床に倒れた

彼は友達を見た時、その友達の自転車のブレーキが掛からずに車と衝突して大けがをする未来を見たらしい

そしてそれを注意した次に日に、その友達から不気味がられて避けられた

彼は周りの人を守ろうと自分の犠牲にしていたようだ

『はぁ...はぁ...はぁ...』

やっと彼の膨大なる記憶を全て見終えた時、体は汗でぐっしょりとなっていた

乱れる呼吸を落ち着かせようとあまり力の入らない腕を支えにベットにもたれる様に座った

「にゃー」

『シュヴァルツ...、煩かったな、ごめん』

ベットから黒猫のシュヴァルツが我の頬を心配そうに舐めた

『これは塩分じゃからな、あまり舐めんほうがええよ』

呼吸が落ち着き、汗で気持ち悪い体を流そうと立ちあがる

しかし、急な眩暈が襲って来てバランスを崩す前にしっかりと地に足を着いた

『ヤバ、これ...』

などと言って足を少しずつ進め脱衣所までやってくる

そのころには眩暈は治まり、風呂に入った
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