世界が違う

□玉狛支部
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迅sid



レイジさんの手料理を食べ終え、風呂に入った

風呂はとても静かで、リビングからは小南の声がよく聞こえた

コンコンと目的の人物がいる部屋をノックする

『なんじゃ?ガキンチョ1号』

扉を開け、中から白川さんが出てくる

何時もの青いジャージではなく、私服姿で

基本的に白川さんはジャージのズボンとパーカーを着ている

迅「(寝てもいいですか?)」

『寝れんのか?ええよ。おいで』

迅「(ありがとうございます)」

白川さんは俺が失声症になった時から少しだけ優しくなった

けど、時々人を突き放す言葉を発するのは変わらない

「「「ニャー」」」

部屋に入れば3匹の猫が出迎えてくれる

これもこの部屋では当たり前の光景だ

女性にしてみれば物がない

本棚と机とベットとカーペットしかない

ベットは前に使っていた物を忍田さんが持って来て、机は新しく安いのを買ったらしい

本棚は娯楽用品の宝庫だそうだ

いつ見てもその本棚にはクロスワードとかナンプレしかない

防衛任務で体を動かす分、休憩中はこっちで遊ぶんじゃ

と言っていた

今月に入って新しいナンプレが発売されすぐさま購入すれば3日で終わり

先週は過去に発売された物を古本屋で買って来たと喜んでいる

机の上には簡易な電気と新しく購入した本が3冊とマグカップがあるだけだ

『ほれ、此処に至るから、子供は早う寝るんじゃな』

ベットの前に立ちながら白川さんは俺を見て言う

最上さんが亡くなってから、俺は1人で眠るのが怖くなり

度々白川さんに頼っている

最初のうちは視界に入っているだけで眠れたが

最近は俺の副作用が働き、その内容に怖くなってそれだけじゃ眠れなくなってきた

今では一緒の身長になっても、白川さんは俺を完全に子供扱いする

本当は腹立たしい事かもしれないが、この人がずっと傍にいるならそれでもいい

動かない俺から視線を外し、ため息を一つ零す

机の上を照らす電気を消し、俺の手を取って一緒に布団に入った

『お前さんは何を視たんじゃ?』

迅「......」

言えなかった

白川さんの視点から見た未来は、俺の知らない場所だったなんて事

だって、この人はそれを理解していると無意識のうちに思っていtから

迅「(寂しい)」

『玉狛がおるじゃろ。お前さんらの家族じゃろ』

その「お前さんら」の中に彼女は自分を含めているのか分からない

この人は何時も重要な事を自分から言う事もなければ、聞いてもはぐらかされる

迅「(傍にいて、ずっと、傍に...)」

少しずつ暖かくなる布団の中で瞼が急に重くなり始める

『じゃから憎めと言っておるんじゃよ』

その言葉を最後に、俺は今日の疲れを癒すために眠りについた



『迅...、迅...!、迅!』

迅「!」

『おはようなんて言ってられんが、最悪が来た。疲れておるし、眠たいかもしれんが、行くぞよ!』

迅「(うん!)」

何を言っているのか分からない

最初に部屋へ入った時は真っ暗だったが

既に日は上っており、昼近くだ

けど、町が燃えていた

所々から黒い煙が立ちこみ、所々に白い近界民がいた

『トリガー起動』

ベットからいち早く出ていた白川さんはトリガーを手に起動させる

迅「(トリガー起動)」

釣られるように立ちあがりトリガーを起動

窓を開け放った白川さんはその窓枠に片足を乗っけており、そのまま下へと飛び降りた

俺は最初こそ驚いたもののトリオン体であるから大丈夫だろうと思いまた釣られて飛び降りる

小南「白川さん!?」

木崎「迅!」

支部の扉の前に立っていた2人の前に降りたらしい

背後から驚く2種類の声が聞こえた

林藤「おいおい、いくらなんでも扉から出てくれよ。戸締りしなきゃ」

『大丈夫じゃと。そんなに余裕がある市民なんておらんからな』

林藤「いや、違うだろ」

『兎に角、我らは行動あるのみじゃ』

即席チームなんて物はない

白川さんは林藤さんと行動し、俺は3人でチームを組んだ

この日にいなくなるんじゃないかと不安が大きくなるも、白川さんの声が頭の中に木霊する


――『憎め』


その言葉がずっとずっとずっと、俺から離れない

『生きて戻ってくるし、戻って来んかったら恨め。それだけじゃよ』

白川さんと林藤さんは支部の左へ

俺達は右へと別れた
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