世界が違う

□空閑遊真の過去
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『相手は明日の夜にまた奇襲を掛けるようじゃ。目的は2つ。この場内の把握と兵士の奪還じゃ。どうやら此方の要求は聞く気がないようじゃぞ』

シラカワさんは前線で戦っている間に2人ほど相手国の兵士を捕まえ、此方に戻ってきた

その強さは折り紙付きで、ノーマルトリガーだったら俺なんて簡単に死んでいるだろう

そして、シラカワさんが捕まえて来た兵士を取引するために交渉に入った時、シラカワさんの姿はなく

門を潜って隠密を行い、相手の過去を見てきたと言うことだ

空閑「随分無茶するね」

『ん?こんくらいしておかないと、後が大変そうじゃし。お前さんは父親の遺言通り「日本」へ行くんじゃろ?』

空閑「まあね」

『なら、早めに終わりって行った方がええじゃろう』

穏やかに微笑む半面、シラカワさんは俺を見なかった

それは姿とかじゃなくて、誰かと重ねているような感じが取れたから

俺じゃない、別の人を見てるんだって気づいた

空閑「ねえ、誰を見てるの?」

『?、遊真じゃけど?』

空閑「お前、つまんない嘘つくね」

『!』

何時もヘラヘラとしているその表情が固まり、俺は図星を付いたと思った

人はそこから何かの疑いを晴らすためにさらに嘘に嘘を重ねて真実を遠ざける

『いやね。お前さんを見ておると自国に置き去りにした可哀想なヤツとダブるんじゃ』

空閑「可哀想なヤツ?」

『おん』

部屋からベランダへ出ると夜風が冷たかった

風になびく綺麗な髪を見ていると戦争の事なんて忘れそうだ

『大切で可愛い後輩なんじゃけどな、「日本」に置いて来たんじゃ。ソイツは声の出ん可哀想なヤツでは、自分の持つ副作用で未来を生かすために現在を殺しておるんじゃよ』

空閑「未来のために現在を?」

『おん。ほんと、可哀想なヤツじゃよ。アイツはな』

空を見上げながらシラカワさんはそう言った

誰の事かなんてサッパリ分からないけど、それでもその目は本当に悪い事をしたと言う罪悪感が強く込められていた

空閑「泣くのか?」

『ん?我が泣いても懺悔にもならん。じゃったら我は大人しくしておるよ』

空閑「競争しようよ。どっちが早く「日本」に着くか」

『えー、我は色んな所を旅行しておるからな。お前さんよりも遅いかもしれんよ』

空閑「なら約束。俺は此処の戦争が終わったら「日本」に行く。シラカワさんの目的地も「日本」だったら一緒に行けなくても向こうで会えるかもしれない」

『なんじゃ、観光案内か?』

空閑「そんな所だよ」

『分かったぞよ。じゃあ、約束じゃな』



空閑「その次の日、シラカワさんは静かに行っちゃったよ」

今何処で、何をしているかなんて想像もできない

野宿をしているのか?

つかまっているのか?

能天気にぶらぶらしているのか?

迅「あー、なんか、分かった気がする。白川さんの副作用」

小南「何言ってるのよ迅。「過去視」でしょ?」

迅「違う違う、そこじゃなくて、白川さんが見えるのは相手の過去何でしょ?」

空閑「うん、シラカワさん自身もそう言ってた」

迅「ボス。俺の他に「未来視」居るなんて想像してなかった」

烏丸「?」

三雲「え?」

林藤「なんだ、もう分かっちまったのか。つまんねーな」

そう笑いながら林藤さんは残りのコーヒーを飲みきる

小南「ちょっと!白川さんの副作用は「過去視」そしてその話をしているのに迅は一体誰の事を言っているの!?」

迅「誰って「白川さん」だよ」

宇佐美「ああー、そう言う事ね」

雨取「あの、どう言う事ですか?」

栞ちゃんは何かが分かったようで1人で自問自答をブツブツを繰り返しながら納得した

宇佐美「迅さんが「未来視」の副作用を持つのは知ってるよね」

小南「何を今さら」

宇佐美「そして、迅さんの視た「未来」は記憶に入るじゃん」

小南「何よ」

三雲「あ...」

烏丸「なるほど」

木崎「そう言う事か」

そこで修や烏丸先輩とレイジさんが理解した

俺と千佳と小南先輩はサッパリだ

三雲「過去の記憶を見る副作用を持つ白川...先輩は、迅さんの過去を視ていた事になりますね」

雨取「あ」

迅「つまりだ小南。俺の視た「未来」は俺の記憶に入ると、1秒先では「未来を視た」と言う過去形の言葉になる。白川さんはその俺の「未来を視た」と言う過去の記憶を視ていたんだ」

小南「な!」

林藤「「未来視」も「過去視」も脳に掛かる負担は大きい。けど、迅の「未来視」は目の前にいる人間に働き、尚且つ不確定な未来では情報が少ない。一方氷月の「過去視」は相手の過去を視ると言う代物だ。歳があればあるほど全てを視ようとするために迅よりも脳の負担が大きい」

木崎「だから時々寝込んでいたのか」

だからか、時々苦しそうな顔をして戻ってくるのはそれが理由だったのか
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