世界が違う

□最後の姿
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白川さんの使っている旧型のトリガーには緊急脱出がない

此処でトリオン体が解ければ、それは本当に「死」を意味する事になる

俺は新型のトリガーを使っているから万が一何かがあっても

緊急脱出の機能で本部に無事戻る事が出来る

『大丈夫じゃ。我とお前さんなら行ける』

迅「(白川さん...、お願いだから...)」

『だから、「恨め」って言っとるじゃろ?ほれ、愚痴は何時でも聞いてやるぞよ』

相手の銃が発砲され、白川さんはシールドで完全に防ぐ

乗っている近界民から飛び降り、そのまま相手に大分する勢いで左の腰にある弧月を取り出した

「格好の的だ!」

相手はそう叫び、喜びながら

空中の白川さんに向けて連続で弾を打ち出す

『誰が的じゃ!ガキ!』

空中で体を捻っては弾を避け、避けられない場所は弧月で弾を切る

白川さんが囮になっている隙に相手の懐に飛び込むも

「バレバレだ!」

相手も右で剣を持ち、俺の弧月を受け止める

『迅!』

迅「!」

空から名が呼ばれ、影が近づいてくる

さっと後ろに飛びのけば、空から白川さんが弧月を振るう

地面に着地した白川さんは相手の行動の全てを見て、早急な判断をして攻撃をしたり避けたりを繰り返す

ガキィン!と剣がぶつかり合う音が鈍く聞こえても

相手の背後から攻撃を加えても俺の弧月が当たる事はない

『なるほど。「危機回避」の副作用か』

「一発で見破ったか。お前は戦闘慣れしてるな。コイツとは違って楽しめそうだ」

『そりゃ、どうも』

「けど、コイツの動きも厄介だな。俺の嫌な所ばかりを攻めてくる」

『彼の優秀な師が途中まで育てたからな。当たり前じゃよ』

2人の会話を聞きながら、俺はヤツの背後を取っていた

取っていたはずだったんだ、なのに

迅「ッ!」

【トリオン供給器官破損、トリガー、解除します】

背後から胸を貫かれ、換装が解かれた

後ろを見れば、黒い細い針が地面から出ており

誰かが解説なんてしなくても、それが原因だという事が分かった

そして白川さんは俺を見て驚愕に満ちた表情をしていた

『お前さん、黒トリガー使いじゃな』

「遅かったね。副作用に気付いた所までよかったよ」

『......』

「さあ取引だ。このガキの命が欲しければ、俺をお前さのボスに合わせな」

ダメ、ダメだよ白川さん

俺の事なんてどうでもいい、だからお願い!

『鬼怒田さん、試運転は此処までじゃ』

バックワームを解いた白川さんは、もう1本の弧月を取り出す

すると相手の顔は此方からでは確認できないものの、驚いた様子が伺えた

俺の背後ではしっぽのような物の動きも止まった

『残念じゃが。お前さんは此処で人生の退場をして貰おう。我を怒らせた、それがお前さんの敗因じゃよ』

右手の弧月を俺の方へ投げ飛ばしたかと思えば、それは俺を見張っていたシッポにあたる

そして目の前ではドンパチが始まった

左手の弧月しかない白川さんは今までに見た事ないような素早い動きで相手に迫り

相手へと着実に傷を増やして行く

相手も反撃に出ようとするも、白川さんの斬撃が速すぎて追いつかず

防御に回るので精一杯のようだ

目も表情も、真剣だ

今までに見た事ない白川さんの表情に息をするのも忘れ

口内に溜まった唾液を飲みこんでも、喉の渇きが早かった

ほんの30秒で相手は跪いた

体の所々からトリオンが天へと上って行き、体の動作は止まる

『どうした?これからじゃなかと?』

口調はそのまま、けど、静かに怒っているのがようやく分かった

「お前、遊んでいたのか...?」

『そんな訳じゃないぞよ。我じゃって、笑顔で終わらせたら後が楽なんじゃよ』

「狂ってる。お前、狂ってるじゃないか...」

『知っとるよ。我が狂っておるなんて、とうの昔に理解しておる』

弧月を振り、相手の首が跳ねて換装が解ける

それでもその弧月は相手の首へと先があてがわれた

ドクンドクンと俺の中で緊張が高まる

今此処で白川さんが何をしようとしているのか分からない

理解できない

やめてほしい、この先をしないでほしい

そして白川さんの目が細められると相手は観念したのか

体から力を抜きされがままの状態になる

『はぁ...、やめじゃ、面倒くさい』

そう言って弧月を下げると、白川さんは相手を肩に担いだ

そして再びサイレンがこの町を包み、俺の目の前で門が開いた
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