世界が違う

□最後の姿
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白川さんは相手を担いだまま俺の所へこれば、投げた弧月を回収した

『我はちと旅行してくるぞよ』

困ったように微笑みながら俺にそう言い残すと、白川さんは門に向って歩き出す

迅「(待って...)」

体が動かない

さっきの白川さんが怖くて、体が動かなくなってる

恐怖で、動けない

迅「(待って...!)」

声が出したくても、ヒューとしか言わない

迅「(待って!)」

どれだけ伝えたくても

迅「(氷月さん!)」

どれだけ涙が出ても

迅「(嫌だっ!)」

今だけでもいい、あの人を止める方法は

迅「待ってよっ!氷月っ!!」

『!』

声が出た事がしれれば、俺は体がから力が抜けて崩れる

その場でペタンと情けなく座り込み、前を見れば

『恨めよ。雄一』

涙を零しながら微笑んだ、白川さんを視た

太刀川「迅っ!」

後ろから太刀川さんや風間さんが現れるも

白川さんは門の中へと消え去り、門も閉まってしまった

迅「太刀川さん、俺、俺っ!俺がっ!!」

太刀川「お前、声が...」

あれが最後の姿だった



夜の7時から始まった白川さんの話

今は日付が変わった頃で、此処まで皆は真剣に聞いていた

あの後の俺は放心状態となり、誰が話しかけても理解が出来なかった

1ヶ月以上食わずで、太刀川さんや風間さん、東さん等の人が駆けつけてくれて

レイジさんの美味しそうなご飯の匂いに釣られて食べ始めた

烏丸「残酷な人っすね。遊真から聞いた能天気なマイペースなんてないじゃないっすか」

迅「俺もガキだったからね。そう感じたの」

林藤「なるほどな。だから彼女はそう言い残したのか」

三雲「何ですか?」

林藤「「我に超長期な休日をくれんか?その変わり、情報はいくらでやるぞよ」って俺達の最後の会議に出た」

空閑「流石だな」

宇佐美「いや、超長期って、「超」足りなくない?」

自分の意志で行ったからこそ、彼女の扱いが分からない

敵に寝返った訳ではない

それなら此方の世界なんて火の海だ

雨取「同情?」

「「「「「「「「???」」」」」」」」

雨取「ああ、えっと...」

宇佐美「大丈夫だよ、千佳ちゃん」

雨取「...過去を見て、その人に協力したいと思ったんじゃないですか?」

小南「なんでよ」

雨取「えーっと、「我は人々を守る救助隊じゃよ」って言ったから」

迅「!、もっと詳しく!千佳ちゃん!」

何となく、何となく分かる

分かっているのに

雨取「白川さんは副作用を使って相手の情報を探るために記憶を覗いた。けど、そこにはその人の何らか過去が映っていて白川さんは救いたいのと同時に、向こうの門発生装置を壊そうとした」

空閑「それがさっきの言葉とどう言う意味があるんだ?」

木崎「...「我は人々を守る救助隊じゃよ」。「人々を守る救助隊」これが白川がボーダーに入った理由か」

ああ、なんて俺は馬鹿なんだ

全部、今までの行動が分かった

答え合わせをしてほしい人物は、俺が壊れないように守ってくれていたんだ

なのに、なのに俺の我が儘1つでこんな事に

白川さんはあの子供が泣いているように見えたんだ

だからこそ、守りたいを思い、門発生装置を破壊する一石二鳥のやり方をした

白川さんからしてみれば、近界民も俺たちも一緒の「人」

だからこそ、守らないといけないと思ったんだ

保護されて最上さんの家に連れて行った時は

俺の「未来視」の記憶に負けないように白川さんが膨大な量の記憶に慣れるための期間

そして、俺をあの日から甘やかしたのは

無理に引き剥がした日の埋め合わせと

自分が居なくなっても俺の家族はボスやレイジさん、小南がいると言う事を理解させるための期間

さらに、俺に「恨め」と言ったのは

突然、自分がいなくなる未来を視た俺に対して壊れないようにするための言葉

小南「迅?」

ああ、ようやく分かったよ

でも、分かりにく過ぎるよ

気づけば足は勝手に動き出し、彼女の部屋に向かう

ベットへ倒れこんでも、そこには彼女の香りなんて残っていない

暖かい猫達が、泣きもせずに近づいてくる

迅「分かったよ、分かったよ、氷月さん...」

あの日から怖くて、白川さんの名前を呼ばなくなった

名前で呼ぶと急に胸が苦しくなって、涙がこぼれるから

けど、今日くらいは許してほしい

あなたの行動に気付けなかった愚かな自分を
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