世界が違う

□見えないトリガー
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冬島sid



隊室にて

『冬さんおるかー?』

冬島「お?白川じゃねーか。どうした?」

『トリガーのチップを変えてほしいんじゃけん』

冬島「ああー、そう言う事か」

自分のトリガーをいじっている時に白川が入って来た

白川のトリガーは

メインに弧月、シールド、グラスホッパー

サブに弧月、シールド、グラスホッパー、バッグワーム

と最初に設定した時と何にも変わっていない

冬島「そんで、どする?」

『紙に書いちょる。お歳じゃけんなー、忘れっぽじゃろうと思って』

冬島「歳は余計だ」

ポケットに入っているメモ用紙を広げ俺に渡す

それを見ると、なんとも普通では考えられない設定がされていた

冬島「それでいいのか?」

『我がそれでええと言っておるんじゃ。頼めるのは冬さんだけじゃけんね』

冬島「技術者として、だろ?」

『まあね』

ヘラヘラと笑ってはソファーに座り

玉狛ジャージの中から取り出した小さなペットボトルの中身を半分飲んでいた

冬島「今日から本部暮らしだってなー」

『そうなんじゃよー。おかげで猫達は警戒モード全開でストレス充電中じゃけんよ』

そう言えば、猫飼ってたな

トリガーホルダーの蓋を開け、中身のチップを全て取り外し

中に誇りやゴミが入ってないかの確認をするために老眼鏡をつけた

冬島「それこそ飼い主がいないといけないんじゃないか?」

『それもそうじゃが、慣れるには猫達のペースが必要じゃよ。我はそれま待機じゃ』

誇りもゴミもさすがにないな

引き出したからチップの入った箱を開け、それぞれ在庫が使えるかどうか確認する

冬島「けどよ、人も猫も変わんねーじゃねえの?」

『何がじゃ?』

冬島「不安ってもんはよ」

紙に書かれている分のチップを取り出し、使用可能を確認

外した場所へ慎重にチップを埋め込んでいく

冬島「迅も1人で不安だっただろうな」

『...じゃが、時には変えられん未来もあるもんじゃよ』

冬島「それはお前次第じゃないのか?」

『...さ、どうだか』

書かれてあった全てのチップを入れ、PCと接続して動作確認を行う

特に問題なさそうだ

冬島「あんまり心配させんな。俺はお前がいなくなってすぐに怖かったぞ」

『そう言うキャラじゃったか?』

冬島「うるせぇ、とにかく聞け」

『ほいほい』

冬島「お前のトリガーよくいじってたの俺だからな。何かしらの不備があったら嫌だったんだ。それでなくとも、新米の俺にトリガーメンテに来るのはふざけていると思ったぜ」

『じゃが、冬さんは我の要望に答えてくれた。実際、向こうでは不備なんかなかったぞよ。我がトリガーを落っことすまではな』

冬島「落として壊れたのか!?」

『おん、衝撃で中身がバラバラになった』

マジか、落として中身がごっちゃになるってどんだけ柔い構造にしてたんだよ

『地上20メートルの高さから落とした』

冬島「よく無事だったな!ホルダー!!」

『じゃろ〜』

20メートルの高さから落ちればそれりゃー中身がごっちゃになるわ!!

てか、本当にホルダー無事だったんだな!

なんか変な心配をしてしまった感がある

『じゃが、使用者がボロボロじゃ。戦えるうちに戦っとらんと示しがつかんし、我の中が整理出来ん』

いきなり真面目な話をするな

思わず手が止まって聞いてただろ

止まっていた思考をPCのモニターに集中する

あたかも分かっているように白川は真面目な話をぶっこんでくる

『皆には悪いと思っておる。勝手に近界に行ったり、戻ってきてはボロボロじゃと言って誰にでも迷惑を掛けておる。これは本当に年長者としてもただの人としても許せない事じゃ』

冬「じゃあ、お前が戻って来た理由はなんだ?」

調整の終わったトリガーから端子を抜き、白川と顔を合わせる

その顔はとても見た事のない悲しい表情と何かを失くしたような目をしていた

『我が此処に戻って来た理由は3つ。1つは墓地探しじゃ。我が死ぬのは日本と決めておったから』

冬「だがそれは迅にも誰にでも許されなかった』

『おん。そんで1つは力となる事じゃった』

冬「力?」

『黒トリガーとなる事じゃよ』

冬「...!、それも許して貰えなかったら、お前の目的は最後の1つとなるな」

カバーを被せ、しっかりと固定して完成

動作確認もしたいが、コイツには何かしらの時間がないんだろうな

『最後の1つは、ケジメじゃ』

冬「ケジメ?」

『我はまだ、ある過去を受け入れておらんのじゃよ』

冬「それが出来たら、どうするんだ?」

『さあな、そん時まで我が生きておったら、また考えるさ』

ソファーをから立ち上がった白川は迷わず俺の隣に来ては

机の上のトリガーを握ってジャージのポケットに突っ込んだ

『ありがとさん、冬さん。また頼むな』

冬「おう、何時でもとは言わないけど、また来いよ」

『おん。じゃあの』

初めて見たかもしれない弱々しい背中

何を抱え込んでいるのか分からないけど、誰にも話さないと言う事は自分の問題なんだろう

時間だけの解決なのか、他人の助力が必要なのか分からない

けど、あの目はアリもしない何かを受け入れようとする間違った目をしていた

迅でも誰でもいい

気づいてやってくれ

そんで、コイツに今の三門市を見せてやってくれ
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