世界が違う

□家族って何
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林藤sid



氷月の両親が初めて兄を紹介したのは兄が8歳の時、その時氷月は4歳で

その1年後の事だった

初めて氷月に出会ったのは氷月が5歳の時だ

トリオンを測る時も身体検査も怖がる事無く

騒がしくそそっかしいく喜怒哀楽をすぐに出す兄とは違い

静かで大人しく無表情な妹ちゃんだった

林藤「初めまして氷月ちゃん。俺は此処の戦闘員の林藤匠だよろしくな」

『よろしくお願いします。林藤さん』

俺は最後に自己紹介をすると俺の中に疑問符が浮かんだ

明るい父親と賑やかな母親を持ち、その2つを合わせ持つ兄が居るのにも関わらず

氷月はまるで、その3人と何処も似てなかった

最上「じゃあ、君のポジションを決めるんだが、ごめんね、もう決まってるんだ」

『はい』

医師達から送られてきた氷月の身体能力は普通よりも上

特徴的なのはトリオン量の多さだけだった

氷月の両親と兄は平均よりもやや下のトリオン量であるが

氷月自身は平均を遥かに上回り、計測が出来ない「Unknown」と表示されていた

それでいても、当時のボーダーには攻撃手が欲しかった

後ろで援護をするにはトリガーの技術が大きく後れ、狙撃手としての武器が完成していなかったからだ

城戸さんと最上さんは夜に活動し、俺と忍田は昼につく

城戸さんは性格上、子供が嫌いだし嫌われることが多いために氷月とは合わず

その両親と兄の輪に入っていた

最上「これが攻撃手のトリガー「弧月」だ」

『弧月』

訓練室の中、最上と忍田と俺と言う大の大人に囲まれてながら説明を受ける

小さい氷月に「レイガスト」は無理だと言う事で「弧月」になったのは言うまでもないだろう

そこから約2年

最上の指導の元、他の隊員よりも急速に成長し

『ありがとうございました』

忍田「氷月ちゃんは強いな」

忍田との10本勝負で既に6本は取れるようになっていた



迅「6本!?」

林藤「ああ、戦闘センスはかなりあったよ」



氷月の強みは「冷静さ」だ

相手がこの動きをしたら高確率で次はこう言う動きをするだろう、と予測を立てている事だ

ある程度の予測が立てられると言う事は、それだけ余裕があり

冷静にその場の判断が出来ると言う事だ

これも白川家にはない物だ

笑わない、泣かない、怒らない、悔しがらない

喜怒哀楽が全くと言っていい程なかった



ある日、俺の防衛任務が休みの時に氷月に聞いた

林藤「氷月ちゃんは何が楽しいんだい?」

ココアを淹れて目の前のテーブルに置けば「ありがとうございます」と返って来る

『楽しい事、ですか...』

小さな手でココアを包み込み、フーフーと息を吹き掛けて考える

以前、表情は変わらない

『此処に居る事とおばあちゃんのお家でゆっくりする事です』

氷月の両親の両親は既に他界しているため、氷月が何を言っているのか分からなかった

林藤「お婆ちゃんって、近所とか?」

『大家さんのお母さん、です』

林藤「ああ、成程ね」

当時住んでいたアパートには大家さんの母親が住んでおり

氷月の所に誰も居ないと、何時もそのお婆さんが誘ってくれたようだ

『お婆ちゃんはすごく優しくて温かいんです』

そう言った時の表情は、微笑んでいた

年齢相応の嬉しい笑顔だ

『お父さん達はお仕事でよく家に居ないし、たまに家に入れないからお婆ちゃんの所にいくの』

林藤「え?家に入れない?カギは?」

『お母さんとお兄ちゃんが持ってくんです』

兄の方はそうだとしても、母親がカギを持たせている訳じゃないだろ

『郵便受けに入れていて、一回だけ家を荒らされたって言ってました。カギは初めから2つしかなかったからよく帰って来るお母さんと、お兄ちゃんに預けています』

これじゃまるで、虐待ではないかと

家族じゃないと判断されているみたいじゃないか

家に入れない時は扉の前で座って待っていたそうだ

それをたまたま見かねた大家さんの母親が自分の住まう場所に招待したようだ

春は桜を見ながら、夏は汗を拭いながら、秋は落ち葉で遊んで、冬は小さく震えながら待っていた
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