世界が違う

□見つけた安堵
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迅sid



甘えたい気持ちはだ誰よりも多いと思う

けど、どう見ても甘え方が分からないようだ

迅「氷月。もっと抱きしめていい?」

『好きにすればええよ。おいで』

甘えさせたいのに、俺ばかりが甘えている

どうすれば氷月は甘えてくれるんだろう

俺の部屋のベット寝転がり、愛おしくて仕方ないその体を密着させる

足を絡め、胸に顔を埋め、背中に回した腕に力を込め

深呼吸をすると肺の中は彼女の香りで満たされ、心も多少満たされる

迅「もっと甘えてよ」

『ん?甘えるってどうすればええんじゃ?』

迅「じゃあ強請って?俺から欲しいものある?」

『ん?体温だけでええ。寒いからこれだけで満足する』

全く、俺を煽るの上手だな

『なら、これでええか?』

迅「何...!」

チュ...と可愛らしいリップ音と共に、顔を上げた俺の唇に暖かい物が一瞬だけ落ちてくる

ああ、卑怯だよそんなの

あなたには俺の副作用が殆ど効かないから気持ちの整理なんて与えてくれない

『これで我は満足じゃ』

心の底から綺麗に微笑む氷月の表情に胸が熱くなり、また心が満たされる

すっげー俺、幸せ者だ

迅「あー、もう、氷月は俺を甘やかしすぎ。俺ももう大人だよ?」

『我にとってはまだまだガキンチョ同然。と言いたいが、今は大事な家族じゃ』

迅「!」

『傷ついてほしくない程大切で、もっと傍にいてほしい存在。優しくて大きな手は暖かくて、何でも受け止めてくれる体は当然のように大きい』

俺、愛されてる?

『居なくならないでほしい。守ってあげる。この命がある限り、この声が届く限り、この体が暖かい限り、何度も手放した悠一を、今度も私が守る』

迅「俺も守りたいよ。だから一緒に」

『ああ、愛してる。悠一。ただ1人の、私の家族』

迅「俺も愛してる。俺のただ1人の家族だよ」

互いに家族がいないのに

育った環境1つで何もかもが違う

氷月の全てを知った今だからこそ

俺は俺を産んで育ててくれた母親に感謝しないといけない

愛をくれた事も、孤独にしなかった事も、話を聞いてくれた事も

俺にとっては全てが当たり前だと思った

だが世の中にはそうでない人がいる

その1人が氷月だ

『悠一、1つ願い事をしてもええか?』

迅「何?」

『...トリガーを握りたいんじゃ。やっぱり、我にはあれが必要じゃけん。手放して分かる事実と言うのがよく理解出来る』

迅「それは...」

「ダメ」や「いいよ」なんて俺には言えない

でも俺個人からして言えば、握ってほしくない

また命を危険をさらして欲しくないから

『トリガーを握って育った子供じゃ。トリガーがなければ不安で眠れん。いくらお前さんに包まれておっても、怖いんじゃよ。我はそれだけ臆病なんじゃ』

彼女が自分の事を「臆病」と言っている意味が

最初は分からなかった

だが彼女を理解していくうちに彼女が臆病である事が何となく理解出来る

『悠一、どんなトリガーでもええ。戦える体でお前さんの傍に居たい』

迅「氷月」

目を瞑りながら微笑み、俺の頭を抱え込んで

氷月がトリガーの没収にあって今日で3ヶ月になろうとしている

ボーダー関係の仕事を休ませる1つの要因として彼女からトリガーを取り上げる事だった

トリオン器官の完治、身体と精神の回復が主な目的であり

そのため彼女はトリガーホルダーすらも3ヶ月間見ていないだろう

『我はもう大丈夫だ。我にはお前さんが、悠一が居てくれる。それだけでええんじゃよ』

迅「...本当にそれでいいの?今ならトリガーを二度と握らなくてもいいんだよ?」

『逃げてちゃいかんよ。我は此処へ戦いに戻ってきたんじゃ。3ヶ月もサボっておる』

実はこの未来が視えて居た

そしてこの未来が俺に視えていたと言う事は彼女にもそれが伝わっているだろう

互いに結果を知っていながらも、俺達はやめない

俺は氷月の口から聞きたいから

『悠一、我は許されてはいけない人間じゃ。誰がなんと言ってもじゃよ。じゃから、我は戦わんといかん』

迅「本当にいいんだね?」

『ああ、我は居なくならんよ。勝手にはな』

迅「勝手じゃなくてもダメ。絶対にダメだから」

結局彼女は戦いに身を置いてしまう人間のようだ

トリガーを握って育った子供は大人になってもトリガーを手放せないのだろう

いや、大人になるからこそ余計に手放せないんだ

それでこの3ヶ月間手元にない不安を抱えて居たのは本当にすごい精神だと正直に思った

『悠一。我にトリガーを返してくれんか?』

迅「あなたが望むなら、でも、今度手放したいって言ったら、絶対にもう渡さないからね」

『ああ、ええよ』
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