短編

□どうか清き一票を!
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何事もなく順調な人生というと実のところ大分語弊があるが、俺は裕福な家庭に生まれ優秀な家族たちに囲まれ育ってきた。
父は資産家で母も由緒正しいお嬢様の生まれ、兄たちは成績優秀で一番上の兄にいたっては大学をスキップ卒業までした。
次男、三男も優秀で学校でも取り巻きが必ずいた。
そんな兄弟の末っ子として生まれた俺もジュニアスクールからなにも問題なく常に学年トップをとってきた。
そんな学校生活が変わりを迎えたのは俺が通っていた中高一貫学校と兄弟校の学校が合併したときからだ。
国際学校と名高い俺の母校と、合併したのは今俺達家族が住んでいるこの日本の小さな学校だ。
外国籍を持つ子供やハーフやクォーターばかりのこの俺の母校は英語が多く、これでは日本在住に不都合がでると考えた学校が合併を決めたらしい。
俺達は国際科と呼ばれ、向こうの生徒は普通科と呼ばれるものになった。
だからと言って俺が優秀なのは変わることなかったし、取り巻きが 減ることもない。
ただ学校内を歩くと日本人の姿が目だち、廊下で鉢合わせしたりと少々めんどくさい。
食堂の席もとり合いになったりしていた。
イギリス生まれで日本人の顔の見わけもつかない俺にとっては不愉快と感じていた。
他の生徒はどうだかわからないが、俺の周りの取り巻きたちも同じように感じていたようで文句を言っていた。
生徒会長をしていた兄の後をつぐように生徒会にはいった俺は中学で生徒会長をつとめ上げた。
もちろん高校でもそうなる予定だった。
俺はそうなると思い込んでいたんだ。

「俺が生徒会長になったあかつきにはこの学校をよりよいものとし、実りある学校生活を約束します。この国を飛び出し、世界に羽ばたけるようなそんな生徒を育てられる学校へと変えていきます!
この学校をでたことを誇れるようなそんな学校にすることを誓う!
そんな学校にしたいなら俺に一票を!」

拍手喝さいを受け俺が勝利を確信したその瞬間、一人の日本人が壇上に立った。


「皆さん、はじめまして本田菊です。」

そういって声を上げたのは何の変哲もない平凡な日本人だった。

『これなら楽勝ですね。』

ワザと英語で話しかけてくる友人に頷いたその次の瞬間俺の耳に届いたのは驚くような内容だった。

「私が生徒会長になったあかつきには、なにもしません!何故かというと私は生徒会長になりたくないからです!生徒会長というとかっこいいイメージがあるかもしれません!だけどほんとうは大変な仕事なのを私は知ってます!だから私は生徒会長になりたくありません!先ほどのカークランドさんの演説はすばらしかった!ああいう方こそ生徒会長になるべきです。私はそう思います!だから皆さんどうか私に清き一票をいれないでください!!」

そう力づよく言い切った奴は足早に壇上を降りた。

予想外すぎるスピーチに誰もが驚くなかどこからともなく笑い声が聞こえた。

まさかこのスピーチで生徒会長に選ばれるとだれが思っていただろうか。

スピーチが終わり、始まった投票の結果・・・圧倒的多数で本田菊の勝ちだった。
こうして俺の高校生活は思い通りとは逆の方向に進んでいったのだ。

そしてここから俺率いる新聞部またの名をパパラッチ部と本田菊指示派との戦いが始まる。
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