アーサーカークランドと東洋の陰陽道学生生活

□一年目後編
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6【サディック視点】

六年間の魔法学校を卒業をした俺は彫刻家としての目を養う為、飛行用絨毯に乗りちょっとした旅に出た。
目的地は決めてなかったが、魔法界外の美術館とか遺跡とかも回るつもりで、まあ今思うと無計画にも程があるような内容だった。
絨毯の運転に自身の自信のあった俺は旅を甘く見ていた。

朝から少し天気が悪かったが、滞在してたホテルはもうチェックアウトしていたしなにより選んだホテルが悪かったみてぇでサービスは悪いし汚ねぇしで気分は最悪だった。
早いとこ中国を通過してしまおうとスピードを速める俺は天候悪化を無視してた。

(お、みえてきたあれが黄河か。)

中国1の大河の上に差し掛かった頃には雨風が強くなっていて時折雷もみえた。

(やべぇな。)

そこで引き返せばよかったのに、飛び続けた俺の真上に雷が光った。

『プレテゴ・ホリビリス!!』【恐ろしきものから守れ!!】

咄嗟に唱えた防護魔法でぎりぎり防げたはずが、その衝撃は絨毯に直撃した。

『やべっ!』

その衝撃でかけていた目くらまし魔法までとけた俺は無様にもそのまま落下していった。
再び魔法を使うこともできずに、真っさかさまに落下していく俺の目線になにかが映った。

(なんだ?人?)」

水面にぶつかる瞬間、なにかに抱きとめられるような感触がしたがそれさえもまきこんで俺は川に落下した。

ドボン!

水音と共に沈んでいく感覚と薄れていく意識のなか、神々しいほどの光がみえた気がした。

次に目覚めた時に目に入ったのは見覚えのない天井だった。

『ここは・・・。』

『気付かれましたか。』

恐らく中国語だと思われる声がしたほうに顔をむければそこには黒髪と黒い瞳の少年みてぇな奴がいた。

『治療はしておきましたが、どこか痛いところはありますか?』

『・・・。』

まだ混乱していた俺が答えを返せずにいれば相手は困ったようにうろたえ始めた。

『え・・・っと中国語はわかりませんか?え・・・っと英語ならわかりますか?』

『いや、少しならわかる。あんたが助けてくれたのか。ありがとう。』

困ったようにつたない英語で聞かれ、俺は慌てて中国人の商人との取引用に少しだけ覚えていた中国語で返事をした。

『いえ、ご無事でよかった。お茶飲まれますか?』

(あれは・・・。)

にこにこと笑みを浮かべながら茶を用意するその様子を見ていれば、壁際に立てかけられた丸められた絨毯が目についた。
あれがあるということは俺が落ちてきた理由も想像ついてるってことだろ。

(驚いてないってことは魔法使いか?)

この国に魔法学校があるなんて聞いたことがないが、この国の魔法使いとは限らない。
他の国の学校に通っていた可能性だってあるし、もしかすると自分と同じ他国のものかもしれない。
もし魔法使いじゃなかったらその方が問題だ。
魔法使いではない人間に魔法界のことについて知られるのは違反だ。

(一か八かやってみるか。)

後ろを向いたままの相手に気付かれないようにゆっくり杖を取り出し、構えた。
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