菊と海の向こうの方々

□菊と耀
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【桃まんの午後】

山脈を飛ぶ龍のように気高く
大地をかける白虎のように逞しく
時を旅する朱雀のように優雅に
大地にいきる玄武のように穏やかに

我は四種の神を愛していた。
特に五つの爪をもつ龍は王家の記しとしても使っていた。
それほど気高い我に、初対面から無礼な口をきいたやつがいる。
ちっちゃい隣の国だった。

「全く、日が沈む国は酷いある!」

「だから、それは誤解ですと何度も言ってるじゃないですか」

お茶を飲みながら言うと、ちょっとムッとしたような声が返ってくる。

「私の家の位置と貴方の家の位置を表しただけで、無礼な態度をとったつもりはありません」

小さな手を伸ばし、我がだした桃饅をつかみ手元に運びながら菊が言った。

「それにしてももうちょっとマシな言い方なかったあるか?」

もう何度も説明され、本当はわかっていた。
だけど、まだすっきりしてはいない。

「しつこいですね。東西南北もわからないころなので、すみませんでしたね!」

べーっと舌をだし言うと桃饅にかぶりついた。

(べーって・・。なんか可愛いある!)

膨れた顔をして、桃饅を食べながらそっぽを向くその顔は可愛いすぎる。

(桃饅でほっぺが膨れてるある!)

無性につつきたくなって、そっと指を伸ばすと菊にすぐ睨まれた。

「なにしようとしてるのですか?」

ほっぺの中の桃饅を飲み込み、怒ってくる。

(ちぇ、気付かれたある)

「なんでもないあるよ〜」

笑いながら、ごまかし指を引っ込める。

我が指を引っ込めたのを確認し、菊はまた桃饅にかぶりついた。

最初はなんて表情がない子供だと思ったけど、付き合ってみるとわかってきた。
はっきりとは表さないけど、よく見ればわかる。
微妙な表情の変化や、口調の変化でなんとなく理解できる。
それに、付き合いが長くなり少し打ち解けたのかよく話すようになった。
実はそれが一番嬉しい。
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