アーサーカークランドと東洋の陰陽道学生生活

□一年目後編
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『おやめなさい。』

攻撃するつもりではなかったが、振り返りもせずに言ったその言葉に俺はドキッとした。

『なにをするつもりかは知りませんが、ここで動けば逆に騒ぎになりますよ。』

『なんでわかったんでぇ?』

『そういう気配には敏感なのです。なにか事情があるのでしょう、追及はしません。』

にっこりとした微笑みをくずさずにそう言った男は俺の前に中国茶を置いた。
ゆったりとした落ちつきはらった動きは魔法界の人間をみなれた俺からみてもどこか常人離れしていた。

『・・あんた何者なんだい・・・。』

『私は本田菊、この国で仙術という同じ特殊な力の使いかたを学んでいる者です。』

『水面を走ってたのもそれか?』

『みていらっしゃったんですね。』

『やっぱり走ってたのか。』

『おや、カマをかけたんですか?』

そう言いながらも焦っている様子もなく相変わらず微笑みを浮かべてる。
知られても問題ないことなのか、それともこっちがなにもできないと高をくくってんのかいずれにしても顔色一つ変わらねぇとは・・・。

『それはそうとお名前をお聞きしてませんが、教えていただけませんか?』

『それは・・・。』

その瞬間、軽くノック音がした。

『はーい、少々お待ちください。』

その音にすぐ返事を返し、俺に静かにしているようにと注意し部屋をでていった。
微かに聞こえる会話に、手荷物の中にのび耳が入っていたことを思い出しそっとドアの方に転がした。

『で、何拾ってきたある?正直にいうある。』

『お耳が早いですね。ただの鳥さんですよ。』

『鳥?』

『そうです空を飛んでた鳥さんが落ちてきたから助けただけですよ。』

『何の鳥あるか?』

『母国では見ない鳥なのでわかりません。大きなかっこいい鳥さんですよ。』

『・・・・ふーん、まあいいある。こうなったらどうせ言わないのはわかってるある。面倒事だけはごめんある。なにかあったら責任は全部お前がとるよろし。』

『もとよりそのつもりです。』

『生意気なガキに付き合ってる時間はないある。我は先に帰るある。』

『はい、では。』

声は若いが保護者だろうと思われるその声の主は明らかに苛立った様子でそう告げると、この部屋の前から立ち去ったようだ。

「はぁ、疲れた。」

ぼそっと小さな声でなにかをつぶやいたのは聞こえたが聞いたことのない言語だったから生憎意味は理解できなかった。

『お待たせしました。』

『誰がきたんでぃ?』

『私の保護者です。先に帰るって言いに来てくれただけですよ。』

あっさりとそう返した内容は先ほどの話の雰囲気とは全く違い、問題などなにもないかのように聞こえる。

(いわねぇのか。)

『それでなんの話してたんでしたっけ。』

挙句に話をそらすようにワザと話を断定せずに尋ねてくる。

『サディック・アドナン、俺の名前はサディックだ。』

ここまでされてんのに本名を名乗らないなどできるはずもなく、俺は正直に本名を言った。
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