季節夢

□Pocky2015
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※ちょっとほも注意。


「ポッキーゲームしようぜ」

私の目の前に赤い箱を寄せて目を輝かせるのは六つ子の長男である。その周囲には、彼と同じ顔をした五人が居るが、そわそわしている者や自信に満ちた表情をする者、各々異なった態度で私の反応を待っている。

「え、皆とやるの」
「いや、一人で良い」
「えっと」

じゃあ相手は私が決めて良いのか、と言い掛けると、今度は弟の一人が割り箸の入った缶を寄せる。聞くと、当たった人とポッキーゲームをするというものらしい。ああ、だから皆そわそわしているんだ。しかし、其れだけでは私に何のメリットもない。どうせ彼等からは逃げられないだろうし、やるのであれば面白い物を見てみたい。私は交換条件として、兄弟同士でポッキーゲームをするのであればゲームに参加すると伝えた。

「じ、地獄かよ」
「嫌なら…」
「やる!皆もそれでいいな」

こくりと頷く五人に、私は内心にやけた。何だか面白い事になる予感がする。

「一回戦。引くのは、」
「**ちゃんで良いよ」
「じゃあトド松君のお言葉に甘えて、5番と1番」
「何だ、十四松か」
「おそ松兄さんだ!!」
「まぁ俺達、現代バージョンの姿で裸になってるし余裕余裕」
「よゆーよゆー」

二人は顔色ひとつ変えずにポッキーの端を口に含む。チョコの無い方をおそ松がくわえており、小さな事でもお兄さんらしさが垣間見える。そして、二人の準備が整った所で、私は合図の声を鳴らした。

「ひょっ、ふゅーひはふ!」
「へーーー??」
「はえ!はえひろ!」

ボリボリボリボリ
おそ松がゆっくりと進めていくのに対し、十四松君はポッキーゲームの意味を知ってか知らずか、急速に口を進めていく。目の前の兄は焦り声を出すが、残念ながら弟には伝わらない。それも皮肉なことに、兄の声に意識を奪われた弟は、残り少しという所に速度を緩めず、遂に唇が触れてしまった。

「っ……ぷ、」
「わ、笑うなトド松…!」
「はじめてが、おとこ…おとうと…」
「あははははは!」
「鬼か**ちゃん!」

あまりの落ち込みように、私も笑いを堪えることができずに漏れ出してしまう。チョロ松君に指摘されて息を整えるが、魂が抜けているおそ松君と元気な十四松君の姿をちらっと横目に入れると更に笑みが溢れ、再度突っ込みを入れられてしまった。よし、気を取り直して次だ。

「あー、面白かった。じゃあ次は2番と4番」
「うわぁ」
「この二人って」
「これはやばい」
「がんばれーーー!!」
「……」
「ひぃっ、そ、そんな睨むなよ」
「…早くしろよ」

次に当たった人は、兄弟の中でも犬猿の仲なカラ松君と一松君だ。案の定、一松君は私とカラ松君を鋭い目で睨み上げ、カラ松君は怯えている。ごめんカラ松君、私も恐い。

「っ……」
「……」
「、」
「……終わり」

相方となったカラ松君に無理矢理ポッキーを押し込み、私の合図なしに勝手にゲームを始める。そして、傍観者の私達がぽかんとしている間に、棒は少しだけを残してゲームは終了していた。カラ松くん、全然食べてなかったよ。

「つ、次いこうか、最後は3番と6番」
「クソ童貞か…」
「おいこらトド松!本音駄々漏れしてるぞ!」
「ごめーんチョロ松兄さん」

ぺろっと舌を出して謝る末っ子の姿に呆れながら、二人はスムーズに準備をする。合図を出して唇を進めていっても、速度も距離も調度良い。トド松君は少しだけ様子が可笑しいが、この二人なら安定感がある。実際に、彼等は唇を触れずに数センチだけ残してゲームを終了した。

「**ちゃん見てー!僕達上手かったでしょ!」
「何でお前は目を瞑ってやるんだトド松!」
「んー、雰囲気?っていうかチョロ松兄さん顔赤ーい。まさか僕に興奮したとか」
「んな訳ないだろ!」
「はいはい、皆お疲れ」

何時まで経っても終わらない不問な戦いに、私が仲裁に入り強制的に終わらせる。薄い本を書く女の人達が喜びそうなものを見てしまい、面白いものが見れたと私は満足した。

「よし、俺達やったから次は**の番だな」
「あ、そうだね。じゃあくじを」

先程のようにくじを引こうと手を伸ばす。しかし、私より早い動作でトド松君が缶を取り上げた。頭にはてなマークを浮かべる私に対して、彼は彼らしくないにやりとした表情で私を見る。

「僕達皆やったんだよ」
「久々に俺達も身体張ったしな」
「今度は俺いちご味ーーー!!」
「**、はぁ遂に君と俺もポッ」
「まさか逃げないよね」
「…逃げられる訳無いけど」

トド松君の言葉に流れていくように、他の兄弟達は私の周りを囲んで逃げ場を失わせる。その手には、ポッキー一本なんて可愛らしいものではなく箱ごとだ。いや、嘘だよね。

「此れが嘘だと思う?」

悪魔のような微笑みを見た後、一人一人が持つ箱を見て、やってしまったと少し前の自分に後悔した。もう当分ポッキーはいらないかもしれない。


___
一人一箱分ポッキーゲームをした模様。



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