□パンツ
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※注意



私の彼は格好付けることが好きだ。しかし、彼の中の格好良いというイメージと世間のイメージは少しずれている。この間のデートに至っては、髑髏柄のキラキラしたシャツを着て、待ち合わせをした駅で立っていた。勿論、恥ずかしいから辞めるようには言ったのだが、意味の分からない言葉を淡々と並べていたので取り敢えず無視した。
それでも、洋服を好きになった訳ではないから、と自分に言い聞かせてきたが、流石に此れは無い。

「パンツが光ってる」
「ふっ…**の為に新しく買ったんだ」

私の為とか何とか言っているけれど、別に私は闇光る下着に興奮するような性癖は持っていない。寧ろ、其のパンツを良い表情して穿いている恋人の頭が心配になる。

「カラ松、そろそろ病院行く?」
「何だ**、もう俺達のベビーができたのか」
「いや、産婦人科じゃないし、まだ私達そういう関係じゃないからね。今からそういう関係になろうとしているけども」

付き合ってから一年が経つが、私達には身体の関係がなかった。私が拒否していたのではなく、カラ松がヘタレ過ぎて手を出せなかったのだ。今回だって、彼の兄弟達が気を利かせて(面白がって)、行為に使うとても大切なものをカラ松に託したことから、漸く関係を結ぶ決心がついたのである。彼の兄弟達も、まさかカラ松の決心がつくとは思っていなかったようで、まだ、未経験な彼らは裏切り者と叫んでいた。

「ごめん、カラ松。生理きたっぽいから、今日はやめよう」
「嘘」
「何でわかるの!?」
「におい」

変態か、と突っ込みをいれても彼は動じない。それどころか、先程に比べて興奮したように顔を近付けてくる。本当に変態か。もうとっくの昔に私の心は萎えているというのに、彼はまだ続けるようだ。それならせめて、着替えてきて貰いたい。

「ちょ、カラ…っ」

何時もは中学生がするような可愛いキスでも真っ赤になる彼なのに、人が変わったかの様に深いキスをする。抵抗していた手の力が抜け、目がとろんとしてきて、雰囲気に流されそうになる。だが、初めてなのに光るパンツだけは御免だ。

「は、なして」
「**可愛い…」
「ちょっ………離してってば!」

急に私が叫んだことに驚いたカラ松は、一松に胸ぐらを捕まれた時のような涙目になっている。ごめん。

「その、カラ松と…す、するのが嫌なわけじゃないから」
「あ、ああ…」
「それより、そのパンツどうしたの?」
「**のた」
「そういうの良いから」
「これを穿けば**が喜ぶって、トド松が」

先程よりも、もっと涙目になるカラ松を横目に溜め息を付く。おいトド松さんよ、これは勝負パンツではないのですが。それに、幾ら弟に勧められたとはいえ、ドヤ顔で光るパンツを穿いていたカラ松の姿は忘れられない。

「ちがうパンツで、また今度しよ」

此の為に気合いを入れたカラ松はトラウマになるかもしれないと思ったが、耳元で囁くように言えば、真っ赤になって頷く。あのキスをしたのは本当に彼だったのかと、今では嘘のように思える。私の彼は格好付けることが好きだが、可愛いの方が似合うと思うのは、私だけだろうか。


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次のパンツはミッ●ー。



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