□ぷにぷに
1ページ/1ページ



「おそ松って、筋肉ないよね」
「は?」
「ビールばっか飲んでるからかな。ぷにぷにー」
「ちょ、やめろ」

寝転んでギャンブル誌を読むおそ松に、特にやることもない暇な私は興味を向けてみた。雑誌を読むのを中断させられたおそ松は迷惑そうに、だが少し嬉しそうに、目線を雑誌へと戻した。

「好きなだけ触れよ。触った分、後で**の腹も触ってやるから」
「ぎゃ!良い、もうやめる」
「おせーよ」

直ぐに手を離したのに、おそ松は雑誌そっち除けで私のお腹を触ってくる。左手は、少し上を触っているような気もするが、勘違いだろう。良い玩具を見付けたと云わんばかりの表情で、遠慮のないおそ松はお腹だけではなく、二の腕や太股も触ってきた。

「私そこは触ってない」
「んー」
「聞いてる?」
「**のここは、俺より肉あるだろ」
「むかつく」
「何とでも言えよぷに子ちゃん」

笑いながら言う此の男は、本当にムカつく。でも、腕や脚に関しては、おそ松よりも肉がついているし、本当のことだから言い返せない。其れにしても、長い間私の身体を触っているが飽きないのだろうか。

「俺さぁ、**の、このぷにぷに感好きだわ」
「私はおそ松にもっと筋肉つけてもらいたいなぁ」
「ぷにぷにー」
「聞いてる?」
「はぁーまじ癒し」

蔑まれたと思っていたが、恋人が嬉しそうな顔をして触っている姿を見ると、ぷにぷに言われながらも触られることに悪い気はしない。だが、楽しいのとは別だ。

「自分のお腹もぷにぷにしてるんだから、自分の触りなよ」
「ばっかお前、自分の腹触って何が楽しいんだよ」
「そろそろ良いでしょ」
「ぷにぷにー」
「都合が悪いからって聞こえない振りしないで」

よいしょ、と私の身体を触るおそ松の腕の中から抜け出すが、おそ松は離さんとばかりに私の腕を掴んでくる。

「おい、離れんなよ」
「触りすぎなんだってば、飽きた」
「俺の人生の癒しが…!」

私の身体の脂肪ごときに、人生という言葉を使って壮大に落ち込むおそ松の姿を見て、あることを思い付く。上手く行けば、私の夢が叶うかもしれない。


「おそ松が筋肉付けるんだったら、私の身体好きに触って良いよ」


其の言葉を聞いた途端、おそ松は壮絶な速さで家を飛び出した。恐らく、筋肉を付けるには運動→走れば筋肉が付く、という様な単純な思考で町内でも走っているのだろう。筋肉って、一日二日じゃあどうにもならないんだけどな。おそ松が居なくなり、少し静かになった部屋で、私は夢の世界へと飛び立った。



おそ松はというと、日々の運動不足とアルコール摂取により、急激な走りに身体が付いていかずに途中で倒れ、其れを見付けたチョロ松と十四松が連れて帰ってきたのだった。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ