□誰の所為
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*四男視点



「だーれだ」
「…知らない」

何をする事もなく、ぼーっと空を眺めていると、急に視界が暗くなった。その原因を作っている人物の検討は大体つくが、癪なので知らない振りをする。今度は視界が明るくなり、にこっと笑う彼女の顔が眼に映る。

「正解は**ちゃんでしたー」

暇だから来ちゃった、と言う目の前のこいつは、他の兄弟の所へ行けば良いものの、何故だか何時も俺の所へ来ている。自分が六つ子の中でも口数が少なく、面白味のない奴だということは分かっている為、俺の所へばかり来るこいつは不思議で仕方ない。本当、意味の分からない奴だ。

「十四松くんがさっきね、飴くれたんだー」
「そう」
「でも唐辛子味って、ちょっと怖いよね。私食べるの怖いなぁ…一松くん食べてみる勇気ない?」
「ない」

だが、俺の所へ来るものの話す内容は兄弟の事ばかりで、毎日起床から就寝までを共にする俺からすると大して面白くはない。寧ろ、知りたくもない兄弟の奇行やら趣味やらを聞かされる時もあり、うんざりする事も多い。


「トド松くんはやっぱりモテるね、昨日も女の子とデートしてるところ見ちゃったよ」
「見るたび違う女の子だもんなぁ、あ、そうそう。おそ松くんとチョロ松くんが二人で遊んでるとこも久々に見たんだよー」
「まぁ、遊んでたって言うよりも、チョロ松くんが終始何かに怒ってた様に見えたけどね」


自分は眠たい目で返事もせずに彼女を見ているだけだが、そんな事は全く気にせず、彼女は話を刻々と続ける。そんなに喋っていて喉は疲れないのかと疑問に思うが、身ぶり手振りを入れて愉しそうに話している様子を見ると、彼女には疲れるという概念が無いのだろう。

「チョロ松くんも大変だね…ああ、そうそう。そう言えばさっき、カラ松くんに映画に誘われたんだ」
「…カラ松?」
「恋愛ものとかあんまり見ないけど、口コミでも割と評判だから気になるなぁ」
「**」
「ん?どうしたの一松くん」
「行くのか」
「うん、気になるし」

行こうかな、と言う**の腕を掴み、小さい声で行くなと呟く。彼女は突然の事に驚き、目を大きくさせる。自分でも何でそんな事をしたのか分からないが、取り合えず全部カラ松の所為だと思う。

「一松くんがそう言うなら行かないよ」

嬉しそうに笑い、だから一緒に映画行こうねなんて言われて、**と初めて外で会う予定ができた。胸に温かいものが込み上げてくる様な気がするが、其れが何かは分からない。どれもこれも、やっぱりカラ松の所為だ。後で泣かせてやる。



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