□またね
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*リク。これの続き。



今日はカラ松と久し振りのデートだ。
風邪でずっと寝込んでいた彼も元気になり、大分回復した。その間には、カラ松が六つ子であるという事情を知らずに、私が弟と人違いをして別れそうになるという事件もあったのだが、私達の関係も回復したどころか、より絆が深まったような気がする。

「**、ちょっと待て…!」
「早くしないと終わっちゃうよ」

軽々に走る私の後ろでは、荷物をもったカラ松がふらふらと走る。今日は何時も以上に痛い格好をして待ち合わせ場所にいたことに何だかいらっとして、ショッピングで購入した物も含めた私の荷物を全て持たせていた。酷いと思われるだろうが、模様なら未だしも、リアルな羽が背中から生えてるジャケットを着て待たれる私の身にもなって欲しい。それに、彼自身も嬉しそうな顔をしていたから問題はないだろう。

「わぁ」
「ついたな…」
「うん、綺麗」

目の前に広がるのは、橙色の空の下に浮かぶ、潮の匂いがする鮮やかな海原。走っていたのには訳があり、日が落ちる前に一度だけ、此の色を目に焼き付けたいと思ったからだ。

「この季節の海も良いねぇ」
「…」
「ちょっと聞いてる?」
「…」
「おーい」
「…っ!わ、悪い、**に見とれて…」
「ば、ばかじゃないの」

海を見ない彼の目の前で手を振れば、はっと気付いた瞬間に顔が紅くなる。何時もの様な格好付けた態度ではなく、素の状態で口にするから、私も顔が熱くなっていくのを感じる。その空気に耐えられなくなり、何か他の話に切り替えようと、当初から予定していたカメラを取り出して撮影しようと誘う。

「ねぇ、写真撮らない?」
「写真?」
「これから、カラ松との思い出を物にも残したいと思って買っちゃった」
「良いぜ…写真に写るお、」
「じゃあいくよー」

カラ松は何かを言い掛けるが、最後まで聞いても大した話ではないだろうから軽く受け流す。そして、カメラの位置を調整しながら自分達の距離も少し狭めていく。うわぁ、肩当たってる。顔も近いし恥ずかしい。

「はい、チーズ」

カシャ、と機械音が鳴って画像が取り込まれる。これで一つ、彼との思い出が出来たと心の中で喜んでいると、隣の彼はにやにやした表情で写真を見つめ、此の世界は**の美しさに耐えられず滅んでしまう運命だとか訳の分からないことを語り出す。
流石に帰る時は、自分の荷物は自分で持とうと思っていたのだが、やっぱり今日は帰るまで持たせてしまおう。


______
尻に敷かせられなかった。



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