□あなたの隣
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この日は星が綺麗だったから、私はそっと布団をすり抜けて夜空を眺めに来た。少し前までは寒さにも余裕を持てていたのに、今では冷たい風が肌に染みる。カーディガンを羽織ってくれば良かったと、少しだけ後悔した。しかし、真珠の花が咲くようにきらびやかに光る星空を見ていると、私の心は寒さを忘れていく。気持ち良さそうに眠っていたチョロ松君にも、この空を見せてあげたかったなぁ。一人で見るのにも飽きてきて、私は室内に戻ろうした。

「どうしたの」

ふと聞こえた声の方向へと目を向ければ、寝ていたはずの彼の姿が視界に入る。何故かと問い掛ければ、目が覚めたら私が布団から居なくなって探したらしい。普段から下がっている眉が、更に下がっているからとても悲しそうな表情に見えた。ごめんね、部屋に戻ろうか。そう言いはするものの、彼は左右に首を降って私を引き留める。

「星、**ちゃんと少しだけ見ていたい」

チョロ松君は、自分が羽織っていたカーディガンを私の肩に掛ける。そして、外用のサンダルを履いて、先程の私と同様に空を見上げる。

「寒くない?」
「平気だよ。**ちゃんが風邪引いたら困るしね」
「ありがとう」

寒くないと口では言っても、彼は手を子擦り合わせている。カーディガンの御返しに彼の手を握れば、チョロ松君は驚いた様に慌てふためいた。手のひらからは冷たさを感じ、更にぎゅうと強く握ると、彼も私の手を握り返してくる。緊張しているのは分かるんだけど、少し痛い。

「ねぇ、チョロ松くん」
「何?」
「今の私の気持ち当ててみて」
「えー」

正解があってないような問題に、彼は面倒くさがりながらも答えてくれる。しかし、今ので緊張が解れたのか、握る手の力も少しだけ和らいだ。

「眠い、とか」
「ううん」
「星が綺麗だなぁ、とか」
「まぁ、それは思ってるけど…」

其れらしい事は幾つも挙げてはくれるが、中々正解を出さない彼は、そろそろ答えを言えよという目で私を見る。ふふ、少し意地悪しちゃった。自分の口から言うのは少し恥ずかしいけれど、無数の星達が私を応援してくれているから頑張ろう。

「チョロ松くんの隣にいられて幸せ」

外国の恋愛映画のように、彼の目を見ながら私の想いを口にすると、不意打ちを食らった彼は言葉にならない声を出しながら、手の力を強める。折角和らいだというのに、また痛みが戻ってくる。暫くして耳に音が届けば、俺も**ちゃんの隣にいられて凄く幸せだと、彼は照れながら言った。



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