短編集
□もう一度
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「やーい、陰気なスニベリー!」
「髪の毛ベトベトスニベリー!」
そう楽しげに叫びながら、僕に杖を向けてくる忌々しいポッターら。
そんな奴らから、リリーに守られるばかりの自分が嫌だった。
だから、今度こそ。
リリーがいない隙をついて僕を襲ってきた彼らに、そう意気込んで杖を向けたけれど…また、ダメだった。
「っ、クソ……!」
やはり、2対1では分が悪かった。
この場には既にポッターらの姿はないが、ブラックの奴に踊り続ける呪文をかけられ、もう10分はこの廊下で僕の足は勝手に踊り続けている。
この呪文を止めようにも、杖はポッターに掛けられた武装解除の魔法によって弾かれ床に落としてしまっているので、止められない。
…もう少しで次の授業が始まってしまう。しかし周りには誰もおらず、この呪文を止めてくれる先生もいない。リリーもいない事に関しては、リリーにこんな情けない僕の姿を見られずに済んでいるのだから、幸いなのかもしれないが。
結局、誰かの助けを待たなくてはいけないなんてーーああ、僕は何て情けなくて惨めなんだろう。
その時だった。
「フィニート・インカンターテム」
その呪文を唱えた僕のものではない声が聞こえたのは。