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□エアコン
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「あっつい!」


そう言うと、雅紀は私の上から重みを消した。
隣に寝転がると額の汗を、脱いだまま置かれていたTシャツで拭いた。


「やっぱりさ、エッチの時は暖房は消そうよ」


「嫌だ。真冬に裸になるんだよ?寒くて仕方ないよ」


「じゃ、ノッてきたら消そうよ」


「ノッてきたら?なにそれ」


「だいたいさ、俺は布団の中に潜るから余計暑いんだよ」


「だから潜らなくていいって。あれ、私あまり好きじゃないし」


「指だけなんて物足りなくない?」


「もう!変なこと言わないで!」


雅紀の頬を抓ると汗で指が濡れた。
不思議なもので、好きな人のものだと不快感は一切ないのは何故だろう。
上体を起こして雅紀の顔に手の平を置いて、汗を利用して拭くように雅紀の髪の毛をオールバックにする。
痩せてるのに、本当に汗っかきだなぁ。


「だって夏は私が寒いって言ってもクーラー付けるでしょ?」


「夏にクーラーなしでエッチなんてしたら脱水症状で運ばれちゃうよ」


「消してとまでは言わないけど、もっと弱くして欲しい」


「美穂も男になったらわかるよ!男と女ではエッチの時の運動量が違いすぎる!」


「それはそうかも知れないけど。今まで…」


慌てて言葉を止めた時は、もう遅かった。
同じように上体を起こして並ぶと、私の顔を覗き込む。


「今まで?今までの彼氏は、そこまで暑がらなかった?そこまで汗かかなかった?」


「いや…ごめん」


「今までの彼氏とのエッチを思い出して比べるなんてルール違反じゃん!」


「だから、ごめんって」


「こんにゃろ〜!」


雅紀に体をくすぐられてキャッキャと笑う。
雅紀は嫉妬はするけど、責め立てたり怒ったりはしない。
少し拗ねて、怒ってるんだからね?という意思表示をして優しく終われせてくれる。
全然、嫉妬してくれないのも少し淋しいし…
かと言って嫉妬され過ぎるのは勘弁。
そんな自分勝手な理想を叶えてくれる人。


「今までの彼女は寒がらなかった?」


「それ、聞く?」


逆に私は過去に全く嫉妬はしない。
だって、そこに私は存在しないわけだし仕方ないよね。
そんな淡泊な私に雅紀は「無神経!」と拗ねる時もあるけど。
雅紀は「本当に美穂は」と軽く呆れながら、私の耳や髪の毛にキスをしながら話し始めた。


「寒がってたよ。冬のエッチって、それが嫌だって回数が減る人もいた」


「ほら〜!それに比べたら私なんてマシじゃない?汗かいたってシャワー浴びればいいんだから」


「どんどん俺、痩せていくかもよ?」


「え〜!それ、ズルい!」


「よし!じゃ、冬は美穂が頑張ればいいんだよ!」


「私が頑張るって?」


「美穂が主導権を握って…つまり主に上で?」


「嫌!あれ、恥ずかしいもん」


「美穂は恥ずかしいことが多すぎるんだよ〜。もう付き合って2年だよ?」


「これでも少しずつ頑張ってきたじゃん!本当は、もっと拒否したいことある!」


「余計なこと言った気がするから、この話題は終わりにしよう」


暑いと言いながら、また雅紀は布団の中に潜っていく。
まぁ…でも確かに男の人は頑張ってくれるよね。


「雅紀」


「なに?今、忙しい」


私の胸に夢中な雅紀の肩を叩くと、不思議そうに顔を上げた。
そのまま雅紀をゴロンと寝転がらせてキスをする。
雅紀の体に手を這わせると体がピクッと動いた。


「美穂?」


「寒いから。温かくならせて」


もう一度、唇を合わせると雅紀はいつもより深いキスをした。


「あ〜!でも、やっぱり襲いたい!でも…でも!」


「どっちがいい?」


「いや、こんなことは滅多にないからお願いします」


それから私なりに、主導権を握るエッチとやらを頑張ってみた。
体を揺らしながら「暑い…」と思わず呟いた。
これは確かに暑い。
下で満足そうに笑ってる雅紀も、何故か汗かいてるし。
次からは、もう少し暖房の設定温度を下げることから始めてみようと思った。



 

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