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□元カノ
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「なんかさ、どんどん綺麗になっていくよね」


「ん〜?あぁ…そう?」


「整形とかじゃなくて、自然に醸し出る美しさ?」


「ちょうどいい年頃なんじゃない?」


「ねぇ、なにしてるの?」



床暖房の上にゴロゴロ転がる俺を見て、美穂が不思議そうに眺める。



「疲れを取ってるの。ゲームで肩が凝ったから休息」


「それならストレッチくらいすればいいのに。転がってて肩こり治る?」


「わかんな〜い」



両手を上げて、そのままゴロゴロ転がっていくと笑い声が聞こえた。



「スタイルもいいしね」



美穂を見ると、またテレビを見ながら呟いている。
話、戻るんだ。
テレビ画面には昔、俺がお付き合いしていた女優のドラマ。
「本当に付き合ってたの?」と聞かれたから、過去のことだし正直に答えた。
それからと言うものの、テレビに映ると感想を述べる時間が始まる。
別に敵視してるわけではないらしい。
ただ、ものすごく興味があるのは伝わる。
なんなら、その人が恋愛特集で表紙を飾る雑誌を買ってきたりする。
そして、インタビューの記事をわざわざ教えてくる。



「わりと独占欲が強いから嫉妬しちゃうかも、だってよ?」


「ふ〜ん」


「和也と付き合ってた時も独占欲、強かった?」


「さぁ、もう忘れたよ」


「嘘ばっかり!教えてくれてもいいじゃん!」


「それ知って、どうすんのよ?」


「想像するの。この人と和也の恋愛場面…ドラマみたい」



そんなもんなのかね。
俺は彼女が俳優やアイドルと付き合ってた過去があっても特に知りたくないし、想像なんて絶対しない。
嫉妬じゃないけど、なんかその人と3人で付き合ってるような気分になるかも。



「ねぇ、戻ってきて!」



美穂に手招きされて、ゴロゴロと美穂の隣まで転がる。
「地味に疲れる」と起き上がってソファに座り直す。
床に座っていた美穂が、俺の太腿に頭を乗せる。
あら、珍しく甘えモード?
頭を乗せながらも、しっかりテレビ画面の元カノに視線は注がれている。



「番組さ、変えない?」


「なんで?見てるもん」


「なんか、こうしてる俺達を元カノに見られてるみたいで居心地悪い」


「え〜、だって見せてるんだもん!」



そう言うと、俺の腰に両手を回してしがみついてきた。
なんだそれ。
…もしかして、美穂なりの独占欲と嫉妬?
クスクス笑いながら俺の太腿に顔を寄せる美穂を見た。
まぁ、目に見える元カノを画面越しとは言え毎日のように見る心境。
複雑にならない方が、おかしいのかもな。



「美穂、おいで」



隣をポンポンと叩くと、美穂がソファに座る。
リモコンでテレビを消すと「あ〜」と美穂が唇を尖らせた。



「過去はどうでもいいから、俺は美穂と2人っきりの時間を大切にしたい」



ソファの上で胡坐をかいたまま、美穂の方へ体を向ける。
美穂も同じように俺の方へ体を向けた。
向かい合わせてなって、自分の唇を人差し指でチョンチョンと小さく叩く。
察した美穂は軽くチュッとキスをした。
「それだけ?」と笑うと、今度は俺の首に両手を回して微笑んだ。
それからは本気のキスをしてくれた。
珍しく息苦しいくらいのキスをされた後、パーカーとTシャツを脱がされた。



「珍しいことがあるもんだね」


「誘ってきたくせに」


「嫌いじゃないよ。でも、襲う方が好き」



そう言って美穂をソファに押し倒す。



「バンザイして?」



ソファの上で両手を上げた美穂からスルスルと洋服を脱がせる。
ブラに手をかけた時、床から見上げてくる人と視線が合った。
ここまで見せつけることは、ないでしょ?
美穂に笑いかけると、不思議そうに俺を見上げる。
そのままキスをしながら床に置かれた雑誌を裏返した。



 

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