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□チェーン
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「見て、懐かしい〜!」



隣の部屋から聞こえてくる美穂の声に振り返るも、そのままゲームを続けた。



「見て!これ!」



美穂の手には数年前まで、ずっと首に付けていたチェーン。
親に勧められたお守りを、俺らしくもなく信頼してチェーンに下げて何年間も付け続けていた。



「アクセサリーを付けない和也が、これだけはずっと付けてたよね」


「俺の中ではアクセサリーじゃなくて、お守りを下げるだけのチェーンだったからね」


「それでも私、服の隙間から見えるこれが好きだったの」


「あの頃から言ってたね」


「ちょっと付けてみて?」



そう言うと、美穂はチェーンを俺の首に付けた。
それからTシャツの中に入れると「これ、これ!」とうれしそうに笑う。



「Tシャツの首元からチラッと見える感じが好きだったんだ」


「フェチ?」


「そういうわけじゃないけどさ。あと動いた時に首元からお守りが出てきちゃって、しまう仕草とか」


「やっぱりフェチじゃん」


「そうなのかなぁ?」



俺の隣にくっついて、首元のチェーンをうれしそうにいじる。



「くすぐったい」


「ゲームの邪魔してるの」


「なんで?」


「かまって欲しくて」



チェーンから指を俺の耳元に這わせる。
これは…誘ってるんだろうな。
もうちょっとでクリア出来そうなんだけどなぁ。



「くすぐったいって」


「ゲーム止めたら、私も止める」


「まだ、もうちょっと」



わざと意地悪を言うと、頬にキスをしてきた。
フッと笑いながらゲームを続けると、唇を耳に移す。
耳たぶを優しく噛まれた時、負けを認めてゲームを置いた。
そのままソファに押し倒すと、幸せそうに笑った。



「もうちょっとでクリア出来そうだったのに」


「それは残念」


「邪魔した罪は重いからね?」



Tシャツを脱いで覆い被さると下で「ふふっ」と笑い声がする。



「どうした?」


「冷たくて、くすぐったい」



あぁ、チェーンが肌に触れたのか。



「あの頃は、エッチの時これ邪魔って言ってたのにね。お守りが顔にあたるって」


「言ってた!でも、なくなると淋しいものだよ」


「じゃ、今日はこのままでね」



俺と美穂の間に何年も存在してきたチェーン。
何年かぶりに、また俺達の間で挟まれる。
もう、ここ数年は付けなくなったけど。
それでも今も変わらず俺達は隣にいる。
美穂は愛おしそうにチェーンを指に絡ませた。



 

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