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□バングル
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何か冷たい物が頬に触れて目が覚めた。
顔のすぐ横には潤の腕。
冷たい物の正体は、潤が大事に付けているシルバーのバングル。
「寝る時は外してって言ったのに」
前に、潤が寝返りをした時に無意識にバングルが私の顔を直撃したことがあった。
「痛い!」と叫んで起きると頬骨にバングルが付いた腕が乗っていた。
「君は、いつも一緒でいいなぁ」
バングルを指でなぞりながら話しかける。
潤の今、最もお気に入りのアクセサリー。
潤は気に入ったアクセサリーを、わりと長く愛用する。
私としては、勝手に飽きっぽい印象があったから意外だったのを覚えてる。
「でも俺、バングルにキスはしないよ?」
「起きてたの?!」
「おはよう。ごめん、また付けたまま寝ちゃった」
「大丈夫。今日は触れるだけで、打撃は免れたから」
潤は私を抱き寄せると鼻をくっつけて笑った後、キスをした。
「淋しい想い、させてる?」
「どうして?」
「いつも一緒でいいなぁ、って泣いてたから」
「泣いてない!」
笑いながら言っても、潤は笑わずに微笑むだけだった。
「淋しくないと言えば嘘になるけど、淋しいと泣く程ではないよ」
「もう少しすれば今より、ゆっくり出来ると思うから」
「大丈夫!ゆっくり出来ることをうれしく思うのは、一緒に過ごす時間が増えるより潤の睡眠時間が増えるって理由なくらい私は大丈夫」
「それはそれで俺が淋しいけどね?」
「その代わり…」
起き上がって、潤を上から見下ろす。
「一緒にいる時は目一杯、愛してくれる?」
「よろこんで」
そう言うと、首を引き寄せられて深くキスをしてくれた。
首に触れる冷たい金属の感触。
体勢を変えられて、今度は潤から見下ろされた。
「いつか、これは俺から離れていくけど。美穂とは、ずっと一緒だから」
「いつか、ずっと外されることのないアクセサリーを一緒に付けられたらいいな」
「ペアの物が欲しいの?それなら買いに…」
「違う!ここに、ね」
左手の薬指を指すと、潤は優しく微笑んだ。