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□サプライズ
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潤くん。
俺は初めて、あなたをこんなに恨めしく思ってるよ。
全然、予定通りにいかないじゃん!
寧ろ今はもう、なんなら別れ話に展開する勢いなんですけど…



「聞いてる?!」


「もちろん。だから参加するって」


「もう、そこはいい。私は、そういうことを言ってるわけじゃないの」



事の始まりは、美穂から誘われた食事会。
俺の仕事柄、滅多に友達同士の集まりに俺を誘うことはない。
そんな美穂が友達の家での食事会に誘って来た。
信頼できる友達数人と、その彼氏での食事会。
それ、何が楽しいわけ?と思いつつ「予定わかんない」と断った。
よりによって、なんでそんな集まりに俺を誘うんだろう?と不思議に思って聞いてみた。



「彼氏がいるってことは話しちゃったけど、彼氏に逢わせるどころか写真も見たことないし名前は?って話になったの」


「彼氏がいるなんて言わなきゃよかったのに」


「それはそれで面倒なんだよ、紹介や合コン話が来る。知らなかったけど友達の中で私が不倫してるんじゃないかとか、本当は彼氏いないのに気後れして嘘ついてるんじゃないかって心配されてたの!」


「いい友達じゃん」


「だからもう、本当に信頼できる友達だけには逢わせる!逢って!」


「逢う必要ないじゃん、俺とのことは話していいよ。それで充分でしょ?」


「私の彼氏、二宮和也なの。って、それで誰が信じてくれると思うわけ?写真を見せたって信じてもらえないよ!」


「信じてくれない友達なんて離れろ、離れろ」


「それ、本気で言ってるわけ?」



既に、この時に怒っていたのに。
この事態を、社交的な潤くんに相談してみた。



「そこは逢ってやんなよ。俺達の彼女は俺達が知らないところで本当に大変な思いしてると思うよ?」


「それはわかってるけどさぁ…ただでさえ食事会なんて面倒なのに、お披露目されるんだよ?」


「なにが嫌なの?俺は、ある程度付き合って大丈夫だと思ったら友達にも逢うし逢わせるけどなぁ」


「俺、逢わせるような友達いないし。だから、向こうの友達にだけ逢うってフェアじゃない」


「いや…それは話が違ってくるけど」


「はいはい、わかりました。逢いますよ、謎の食事会に行きますよ」


「それさ、行くならサプライズしてあげれば?行けないって言っておいて当日、急に訪れて「美穂の彼氏です」って」


「話を更に面倒にしてない?」


「どっちにしろ面倒なんだから、美穂ちゃんのこと倍よろこばせてあげなよ。彼氏、来れなかった…って場にバーンと現れたら超よろこぶと思うよ?」



そんな会話から「やっぱり行けない」と断った。
当日の場所や時間は目の前で開かれる手帳でリサーチ済み。
その友達のマンションには送って行ったこともあるし。
これでサプライズの準備完了!のはずが…



「これでまた私は笑い者だよ。友達の彼氏にまで疑いの目で見られるんだよ」


「被害妄想だって。男なら仕事で予定が合わないこと、理解してくれるって」


「だから3ヶ月も前から話したじゃん。現に友達の彼氏は予定を合わせて来てくれるんだよ?」


「じゃ、今度のコンサートに招待しなよ。楽屋に呼べばいいじゃん」


「コンサート、終わったばっかりだよね?次のコンサート、ほぼ1年後だよね?!」



怒っている。
非常に強く怒っている。
どうしよう。
話の展開が全然、予想外!



「もういい。もう、和也とはやっていけない」


「えっ?」


「食事会に来てくれないことで言ってるんじゃないの。私、こんなこと今まで言ったことないよね?外でデートしたいとか、友達に逢って欲しいとか言ったことないし合わせるのも苦じゃなかった」


「そこは感謝してるよ」


「そんな私がお願いしたのに、それすら叶えてくれないんだよね?和也にとって私は、そんな存在なんだよね?それなら、もう無理だよ」


「ちょっと待って!ちょっと待とう!」



おい!松本潤!!
どうしてくれるんだよ…
これはもう、完全なるサプライズ失敗では?



「私、別に嵐の二宮和也と付き合ってるって自慢したいわけじゃないよ?好きな人として自慢したいだけなの、こんな素敵な人と付き合ってますって逢わせたいだけだったの」


「うん…」


「もう、こんなこと言うのも嫌だ」



うつむいて泣く美穂を抱きしめた。
「やめて」と離れようとしたけど、強く包み込むように抱きしめる。



「俺、結構ドッキリとか仕掛けるの上手い方なんだけどさ。やっぱり、そこに大切な想いが絡むとスムーズにはいかないね」


「なに言ってるの?」


「情けない話をするから、笑わないで聞いてくれる?登場人物は俺と美穂と松本潤」


「潤くん?潤くんが、どうして関係してくるの?」


「大いに関係してくるんだよ。だから、こんなことになってるんだよ」



それから俺は経緯を説明した。
笑わないで、って言ったのに泣きながら美穂は大笑いした。
でも、その笑いはとても幸せそうで。
あ〜、めんどくさいったら。
こんなに魅力的な女の彼氏として紹介されるんだから、新しい服くらいは買いたい。
嵐の二宮和也としてじゃなくて、美穂が愛してくれる男として恥じないように。



 

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