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□雨の日
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「今日も雨かぁ」



起きてから、どれくらいこうしてベッドでゴロゴロしていたんだろう。
智の言葉を聞いて、外から聞こえる微かな雨音が耳に届いた。



「今日で何日目?」


「1…2……4日目じゃない?」


「もうすぐ梅雨だもんね」


「だねぇ〜」



ため息混じりに言うと、智は体勢を変えて私を背中から抱きしめた。
私の首筋に顔を埋めると「眠い…」と呟く。



「予報では1日中、雨だって。せっかくのオフなのにね」


「特に予定もなかったし、オフも何もないけどね」


「でも、気分的に違うでしょ?オフの日に見上げる空が青空なのと雨空」


「青空なら釣りに行きたくなっちゃう」


「…あぁ、そう。なら、雨でよかった」


「なんで?」


「こうして、ずっと一緒にいたいから」



「ふふ」と笑うと智は私の耳にキスをした。



「今日は、このままカーテンも開けずにずっとこうして過ごしたい」


「ここでずっと、何して過ごすの?」



意地悪く聞く智に負けたくなくて。



「こうしてイチャイチャできるだけで充分幸せ。このままでいい」



このままでいいわけがない。
私なりの精一杯の強がり。



「じゃ、ずっとこうしていようね?眠くなったら寝て、目が覚めたらゴロゴロして…最高だね」


「うん…」


「おやすみ」


「うん…」



そんな言葉が聞きたかったわけじゃないのに。
もっと…求めてくれると思った。
バカみたい。
求めてるのは私の方なのに。
私以上に求めて欲しいなんて…



「俺は美穂の素直じゃないところも、かわいくて好きなんだけどさ〜。時と場合によっては素直になって欲しいなぁ」



耳の後ろから届く智の声に、負けた…と諦めて体を回転させた。
唇を尖らせて智を見ると、何か?と言わんばかりに私を見た。
尖らせていた唇と噛むと、智から目を逸らす。
素直な女は、かわいい…か。



「もっと智に近づきたい。もっと…触れたい」


「いいよ?」


「そうじゃなくて…私にも触れて欲しい」


「かわいい。かわいいね」



ものすごく恥ずかしくなって、智の胸に顔を埋めた。



「こんな体勢じゃ、何も出来ないよ?」


「わかってる…」


「顔、見せて」



軽く命令するような口調にドキドキして顔を上げると、すかさずキスをされた。
目を閉じると、外からは雨の音。
雨の音が聞こえなくなるまで、夢中にさせて。
雨は嫌いだけど、こんな雨の日が続くなら。
私は雨を好きになる。



 

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