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□折り紙
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細長く切った折り紙を輪にして、のりを付ける。
そこにもう1枚の細長い折り紙を差し込み、同じように輪にのりを付けて飾りを作っていく。
「意外と古典的」と1人、呟きながら黙々と作業を進めていく。
明日、友人が結婚する。
大きな式場ではなく、店を貸し切り仲間内でパーティーをしたいとの希望だった。
最終段階の飾り付けの為に、みんなで集まった。
周りの友人達も各々、絵を描いたり花を飾ったり忙しなく動いている。



「また随分と地味な作業してるね」


「懐かしいでしょ?」


「手伝うよ」


「ここは大丈夫。男手が必要な場所、手伝ってあげて」



私の声が聞こえていないかのように、和也は隣に座った。
2人、並んで輪を作っていく。
嫌だな…まだ、友達みたいに話せるほど吹っ切れてないのに。



「すごいひさしぶりな気がする。同棲してたから毎日逢わないなんて変な感じ」


「別れてすぐ新しい彼女を作っておいて、よく言う」


「確かに。でも、フッたのはそっちだろ?」


「そうだけど…周りが意外がってた。彼女、大人しそうで柔らかい雰囲気の子だったよって」


「あぁ…1回だけ偶然、店で逢ったから。意外って、それはみんなが俺のタイプが美穂だと思ってるからだろ?」


「どういう意味?」


「俺のタイプは、勝気で男勝りでハッキリしてる女。そう思ってるんじゃない?」


「それ…私のこと?!」


「美穂と付き合う前の彼女は、みんな大人しくて女の子らしい子だったよ」



「あ、やべ」と和也は、のりが付いた指を擦り合わせた。
付き合ってた時は今までの彼女の話なんて、しなかったくせに…
やめて欲しい。
「折り紙、切り足す」と私に体を寄せて、腕を伸ばす。
やめてよ。
まだ、どれだけ好きかって思い知る。
和也から少し、体を離した。



「私と違って女の子らしい彼女は、明日来ないの?」


「うん、来ない」


「連れてくればいいのに。仲間内しか来ないんだから」


「別れたし。連れてくるの、おかしいでしょ」


「確かに別れたなら…って、えっ?!別れたの?どうして?!」


「他に好きな女がいるから」


「そうなんだ…ビックリ」


「なんかダメみたい。女の子らしくて、なんならブリッコくらいの子が好きだったのにさ。物足りない」


「物足りないって失礼な…ていうか、なに作ってるの?!」



もう飽きて違う物、作ってるし。
私がウダウダ引きずってる間に、新しい彼女を作って別れて、既にもう他に好きな人がいる。
和也にとって、私って…
そうだ。
別れた理由も、そんな感じだった。



「俺がこう言ったら、こう返ってくるのにな…とかさ。こんなことしたら怒ってくれるのにな…とか。求めちゃうんだよね」


「そういうのを少しずつ修正していくんじゃないの?」


「いや、無理」


「最初から諦めて…そんな男だった?」


「相手が変わって満たされるなら、お互い修正していくけどね。求めても相手には、どうにもならない」


「だから、どうして最初から諦めるわけ?」


「だって。俺が求めてるのは、美穂だから。誰も代わりにはなれない」


「それ、どういう…」



和也は私の左手に触れると、優しく微笑んだ。
そして、左手の薬指に今ままで作っていたモノをはめた。
それは小さな輪の上に、ダイヤのような飾りが付けられた指輪。



「結婚しよう」


「だって…」


「だって、でも、だけどは禁止。うれしい気持ちなら、笑ってうなずけばいいんだよ」



和也の言葉に、私は大きくうなずいた。
「泣くなって」と和也は指で頬を拭いてくれた。
次の瞬間「あっ」と言うと、和也は笑いを堪えて私を見た。



「さっき指に付いたのりが…鼻水みたいに付いちゃった」


「ちょっと!拭いてよ!」


「いいじゃん、どうせこれから鼻水も出てくんだろ?」


「最低!大体、言っておくけど。まさか、この指輪で済ませようなんて思ってないよね?」


「そこ、絶対つっこんでくると思った〜。どんな高価な指輪よりも、うれしい!とか言えないかね」


「言えないし言わない。高価な指輪の方がうれしい」


「とか言っておいて、その指輪だって一生大切にするくせに」


「ていうか、これダイヤみたいなの銀色の折り紙じゃん!枚数、少ないから貴重なのに!」


「ダイヤみたいなのって…オマエの、そういうところ!」



楽しいね。
やっぱり和也といると、自分が自分らしくいられる。
和也も同じだといいな。
手作りの世界でたった1つの指輪を見て、微笑んだ。



 

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