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□rainbow of happy color(完結)
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「お邪魔しまぁす…」


物音一つしない室内に自分の声だけが響いた。
キャリーケースを玄関先の長い廊下に置き、進むとキッチンとダイニングルームと繋がったリビングルームへと辿り着いた。


「広い…綺麗…。えっ?庭もある!」


大きな窓を開けて庭を見渡すと満開の桜の木が1本そびえ立ち、テーブルとベンチが置かれていた。
外との世界を遮断するかのような高い塀に囲まれた庭。
誰からの視線も感じさせないように作られた家。
それが、この家の第一印象。


リビングを見渡すと、じゃれ合うように笑い合う5人のポスターが貼られていた。


「そこまでまだ売れていないのに、ここまでしてくれるのか。アイドルって、すごいなぁ。…あ!私の部屋は、どこ?!」


1階を歩き回るとトイレとバスルーム、そしてダンスのレッスンに使われるであろう鏡張りの部屋があった。
そして、そこには大きなピアノ。
その横の階段を昇ると部屋が3部屋。
勝手に人の部屋を覗くのは悪趣味だけれど、部屋のドアはどの部屋もようこそと言わんばかりに開けられていた。


「ちょっとだけ廊下から拝見させていただきます」


手前の部屋のドアの前に立つと、たくさんのハットや洋服とDVDが置かれていた。
隣の部屋に進むと、ゴルフセットやバスケットボール。
そして、更にその隣の部屋には書きかけの大きな油絵と釣り竿。


「うん、なんとなく誰の部屋かわかった!5人の趣味を調べておいた成果!」


自己満足に笑顔になりながら、3階へと続く階段を昇った。
3階も同じように、どの部屋も警戒心なく全開だった。
手前の部屋はパソコンや書類やノート、そしてたくさんの本が乱雑に置かれている。
隣の部屋は何一つ、物が置かれていなかった。
恐らく、ここが私の部屋になる。
ということは、その隣は…
先を進むとテレビに繋がれたゲーム機。
テーブルにも携帯用ゲーム機。
そして、また別の携帯用ゲーム機を手にしたままベッドで眠る男性。


「人…いたんだ」


少し驚きながら、その寝顔を廊下から眺めた。
綺麗な顔。
ずば抜けて美形なわけではなく、クラスにいそうな顔立ちだけど…
綺麗な顔だと思った。
その時、開けっぱなしの窓から風が吹き抜けた。
まだ少し冷たい風に前髪を揺らして、その人はタオルケットに包まった。
仕事柄、風邪でも引いたら大変だと思い部屋へと足を踏み入れた。


「失礼します」


小声で呟き、部屋の窓を締めた。
気持ち良さそうに眠る寝顔を見つめながら、不安に襲われた。
私はこの家で、5人と生活をしていけるのだろうか。
5人の男性と共同生活なんて、仕事とはいえ…
また1つ溜息をつき、その寝顔に背を向けた。
部屋を出ようとした時、背後からの低い声に足を止めた。


「あんた、誰」


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