鬼と妖怪

□夕空翔けるこの想い
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私の頬に一筋の涙が流れた瞬間、
お堂の入り口付近が全て吹っ飛んだ。



「殺生丸さま‼‼」



正面には、刀を手にした殺生丸さまが立っていた。




『来てくれたんだ……私のために…。』





「な、なんだなんだ⁉⁉」

「お前、いいところを邪魔しやがって‼この化け物が‼」


殺生丸さまはとても険しいお顔で男の人たちを睨みつけた。

まばたきほどの後私が見たのは、周りに折り重なって倒れた男の人たちだった。
腕がありえない方向に曲がっている者や、泡を吹いて倒れている者もいる。
全員死んではいないようだけれど………。



「殺生…丸さま…………あり…がとう…ござい…ます……わ、私…………。」



殺生丸さまが来てくれた…。
本当に怖かった…。


安心からか涙が次々溢れて、止まらない。


「お前は、人を信用しすぎる。」

「………っはい…ごめ、ごめ……んなさ……」

「どこも………大事ないか。」

「はい……殺生…丸さま…のおかげで……。」

「ならよい。」



背を向け、森の方へ歩いて行かれる殺生丸さま。
私も後を追わなきゃ…殺生丸さまと離れたくない…。

そう思うのに、さっきまで恐怖を感じて震えていた足は、
思うように動いてはくれなかった。


「あ、あの……ちょっと足が動かないみたいで……。」


あぁ…私、殺生丸さまに迷惑ばかりかけてるな……。




ふわっ





突然、私の身体が宙に浮いたと思ったら、殺生丸さまが私を片腕で横抱きにしていた。
私は生まれて初めて、空を飛んでいた。



「えっ…殺生丸さま…?」

「つかまっていろ。」



あたりはもう夕暮れも終盤、日没が近いようだった。
美しい夕暮れ空に向かって風を切って飛ぶ私たち。
しっかりとした力強いその腕に抱かれ、裂けそうだった私の心を優しく包み込んでくれているようで、あたたかくて、嬉しくて、寄り添うように彼の胸元に顔をうずめた。



胸に広がるあたたかくて優しい気持ち……
この想いは………………………
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