鬼と妖怪

□攫われた鬼嫁 二
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「お前と話す時間が欲しかったのも理由のひとつだ。話しておきたいこともあったからな。」

「話しておきたいこと…?」


「殺生丸が西国の妖怪だということは知っているか?」

「いえ…殺生丸さまが戦国一の大妖怪だということは聞いていますけど…詳しくは知らないです……。」

私、結局殺生丸さまのこと何も知らない……。
殺生丸さまはご自身のことを話されることがないし…。


「そうか。西国はその昔、鬼頭である風間家の統領、千歳が力を持っていた。しかし、殺生丸の父、闘牙王の台頭により西国は犬妖怪一族が統一を果たしたのだ。」

「殺生丸さまのお父様が……」

「闘牙王は本当に偉大な大妖怪であった。しかし………ある人間の女との間に子をもうけ、その母子のために命を落とした。」

それって犬夜叉って人のこと……?
殺生丸さまが人間嫌いなのもそのことが原因なのかもしれない……。


「殺生丸がその偉大な父の遺した刀を探す旅に出ている間、殺生丸の母が西国の妖怪共に睨みを効かせているが、それももう時間の問題だ。
最近西国では紛争が頻発している。統一するにはやはり、犬妖怪一族の統領である殺生丸と、西国鬼一族の統領であるこの俺が戦わねばならぬのだ。」

「そんな………」

「そこに目をつけた出来損ないの妖怪がいる。」

「出来損ないの妖怪……?」  

「奈落…とかいう名だったか。」

「奈落!!?」

奈落って……!
私の村を襲った…!

「奴は元は人間だ。数多の妖怪をその身に取り込んでその力を保っている。恐らく勝った方を体内に取り込むつもりなのだろう。」

「な、なんてひどい……。」

「奴は強い妖力を欲していた。だから、お前を人質にし、白霊山で妖力を阻まれて自由の効かない殺生丸を殺す。手下共がしくじったら俺に殺生丸を殺してもらい、その亡骸を貰い受けたいと話を持ちかけてきた。」

「では、私をここに連れてきたのは、やっぱり!!!!」

「話を最後まで聞け。俺は人質などとらん。戦う時は奴と一対一だ。」

そう言った彼の目はとても真剣で、きっと嘘ではなく、それが彼の本心なんだと分かった。


「奴の手下が間もなくここに到着するが…安心しろ。お前は絶対に渡さん。鬼は約束は必ず守る。」

「風間さん………。」

「そもそも奴は俺が駒として使えぬと踏んだら、お前を攫う可能性があったからな。」


じゃあ、風間さんはむしろ、私を奈落から助けてくれたのかも……。もし奈落の手下に攫われてしまっていたら、それこそ何をされたか…考えただけで背筋が凍る。
殺生丸さまとの戦いは出来たらして欲しくないけれど、風間さんが卑怯な手を使う方では無いということはわかった。



「風間さま。お客さまがお見えでございます。」

座敷の襖の向こう側から、女将さんの声がした。

「あぁ。通せ。」
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