鬼と妖怪
□旅のはじまり
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目が覚めると、私の身体はとても心地よい肌触りのふわふわな毛で包まれていた。
そういえば、寝る前のぼんやりした記憶の中に、殺生丸さまがご自身の纏っていた毛で私を包んで下さったことを思い出した。
殺生丸さま。
彼は妖怪に殺されかけた私を、妖刀天生牙で命を救ってくれたお方。
美しい白銀の髪に、黄金色の澄んだ瞳。そして女と見紛う美しく端正な顔立ち。とても美しいけれど、彼は妖怪だった。
私の村の人たちも、喜助もみんな妖怪にやられてしまった。
殺生丸さまのように人を救ってくれる妖怪もいれば、四魂のかけらという、宝石のようなものを手に入れるためだけにたくさんの人を殺す妖怪もいる。
虐殺を働く妖怪を倒すため、戦いに行かれたお父様を探し出すため、これから村に戻る。
私は決意を胸に身体を起こした。
「目が覚めたか。」
「あ!殺生丸さま。おはようございます。昨日はその…本当にありがとうございました。」
「…」
手をついて頭を下げた私を見て、特に何かおっしゃられるわけでは無いけれど、その瞳がどこかあたたかい気がするのは、私が彼に命を救われた身だからだろうか。
「風の匂いが変わった……村へ向かうぞ。」
「えっ?もしかして、殺生丸さまも村まで来ていただけるのですか?」
「奈落がいるやもしれぬ」
「奈落?」
「邪見、起きろ」
大きないびきをかいて、ぐっすり熟睡していた邪見さまを、足蹴にして起こした殺生丸さまは、そのまま村の方角へ歩いていかれました。
「あっ殺生丸さま」
「あぁっ!殺生丸さま、邪見を置いていかないでください〜っ!」
こうして、私と殺生丸さまと邪見さまの3人で村を目指すことになりました。