鬼と妖怪
□出会い
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時は戦国。各地では、頻繁
に戦が起こり、弱き者は切り捨てられ、殺される。
そんなことが日常茶飯事なこの時代に、
豊かな穀物がなり、心優しい領主が治める活気あふれる村があった。
「お館さま、村の商人より献上したいお品があるそうで」
「おぉ!そうか!まい、お前も一緒にくるか?!」
「はい、お父様。ぜひ。」
「喜助、案内してくれ」
「はい、お館さま」
お館さまと呼ばれ、人好きしそうな顔をした男は、この村の領主、雪村綱吉だ。
そしてその男の問いかけに、鈴の音を転がすような声で答えるのは、その娘、雪村まいだ。
まいは村一番の美人であり、その絹のような髪に、白くシミひとつないきめ細やかな肌、瞳は茶色く、光を浴びると透き通り、その瞳に捕らえられた者は、魅了され、目を離すことができないだろう。
そんな彼女に惹かれる殿方は少なくない。お付きの喜助もその一人だ。
「お館さま、この度は一風変わったお品を持って参りました」
そういって商人の男が小さな桐の箱から取り出したのは、薄紅色の宝石が美しく細工された指輪だった。
「まぁ!綺麗!」
「ん、確かに美しいが…この輪のようなものは…?」
「はい、これは西洋に伝わりし指飾りにございます」
「指飾り…?」
「まいさま、少しお手をお貸しくださいますか?」
「あ、はい」
まいの細い指にはめられた指輪は、美しいが危う気な、何か力を秘めているような…
まいはとても不思議な気持ちになりながら、その自身にはめられた指輪を見た。
「お気に召されましたでしょうか?」
「え、えぇ。とても綺麗だけれど…なんだかとても不思議な気分です。この宝石はなんという宝石なのですか?」
「はい…実はそれがよくわかりませんで……」
「なに、何かも分からぬものをまいさまに付けさせようというのか、無礼であるぞ!」
「まぁまぁ喜助、そう怒るな」
「しかしお館さま……」
「も、申し訳ありません、買い付けた商人にも出処が分からないようでしたので、西洋にしかない特別な宝石なのやも……」
「まぁ、その宝石が何なのか探してみようではないか!私も見聞録などを読み漁ってみることにしよう。案外すぐ見つかるやもしれんからな!」
「あ、ありがとうございますお館さま…!」
「娘の指によく似合ったものを見つけてきてくれたな、礼を言うぞ!」
綱吉の明るい声に、場が和んでいたその時、慌ただしく従者が部屋に転がり込んできた。
「た、た、大変にございます!!!妖怪が!妖怪が現れました!!」
「何?妖怪?」
「は、はいそれもかなりの数で、村人たちが次々と殺されております!!!」
「何だと!?すぐに馬と兵を!近くの大名にも声をかけよ!」
「お父様!」
「まい、お前は安全な場所に早く逃げなさい。喜助、まいを頼むぞ。」
「はい!この命に代えてもお守り申し上げます!」
「お父様。必ず、必ず帰ってきてくださいね。」
「あぁ、約束しよう。」