鬼と妖怪
□旅のはじまり
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昨日、殺生丸さまは、一人の人間の娘の命をお助けになった。
あの人間嫌いで、人間など虫けらくらいにしか思っておられない殺生丸さまが、まさかそのような行動に出られるなど、儂は全く想像もしていなかった。
それだけでは飽き足らず、殺生丸さまは何故かその娘に優しく、長くお使えしてきた儂が今まで受けたこともない寵愛を受けており、羨ましい限りなのである。
娘の元おった村に奈落がいるやもしれぬというので、我々もその村を目指すことになったが……
どうも儂には、娘が無事にその村に行けるかどうか、付いていってやっているように思える……。
いや、まぁ儂の思い過ごしじゃ。そうであってほしいわ。
「ねぇ、邪見さま」
「なんじゃ?」
面倒じゃが、答えてやらんと殺生丸さまに何をされるやら……
「四魂のかけらって、宝石なんですか?どうして妖怪は欲しがるのでしょうか?」
「宝石などではないわ!あれは、昔数多の妖怪を倒した巫女の魂から作られたもので強力な力をもつものなのじゃ。」
「だからそれを使って妖怪たちはさらに強くなろうと…?」
「そうじゃ」
「そうだったのね…では何故そんなものがあのような装飾品に……」
ぶつぶつと何やら言い始めた娘であったが、四魂のかけらが何かも分からず、ただ指にはめておっただけで巻き込まれたと身受けられた。
殺生丸さまはそんな娘に同情しておられるのだろうか?
だから奈落を倒しに??
いや、そもそも殺生丸さまが人間ごときに同情など………
「ねぇ邪見さま」
「今度はなんじゃ!?」
「奈落って誰かわかりますか?」
「誰かって……そりゃあ最近殺生丸さまのまわりをうろついとるやつじゃ。おそらく、お主の持っていた指飾りを作らせたのもあいつじゃろうな。」
「!?」
「奈落は四魂のかけらを恨みや負の感情で汚したがっておるらしいからな。お前の村人も狙われたのじゃろう…。」
「そんな…………ひどい……………」
人間にしては美しく澄んだ瞳をしたこの娘の顔が暗く沈むのを見て、なぜだか儂は落ち着かない気持ちになった。
「ま、まだ分からんじゃろうて!!それを今から確かめに行くんじゃろうが!沈んでおっては始まらんぞ!!」
なーんで人間の娘なんかを慰めてやってんだか……。儂も殺生丸さまに影響されてる!?
「…そうだね、ありがとう、邪見さま」
そう言って花のように、でもどこか儚さを纏い笑う娘を見て、ただ、美しいな。と思ったんじゃ。