毎日を塗りつぶせ
□ホワイトボードが呼んだ出会い
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「あああああー!!ぶつかる!ぶつかります気をつけてー!!!」
「痛っ」
「ああー!!ぶつかった!大丈夫!?てか君存在感ないね!」
昼休みのミーティングに行こうとしたら、女子生徒の声を発するホワイトボードにぶつかられた。
「大丈夫です、腕に角が当たっただけなので」
「おっそれはよかったぞ!ごめんね!なんかこれに昔の外国の電車みたいに乗るの楽しくてつい走りすぎた」
どうやらホワイトボードの端につかまって、シャーッと車のように操縦していたみたいだ。小学生ですか、この人。
「こういうことは他人に怪我をさせることも多いと思うのでやめたほうがいいです」
「そっか...けがはよくない...」
やめよう、としょんぼりとした顔で彼女はつぶやいた。怒られた犬のようだ。
「じゃあ、僕はこれで」
「待って!待って待って!名前なんて言うの!?」
ふざけてホワイトボードをぶつけただけの知らない人に名前をたずねるなんて、案外律儀な人なんだろうか。
「友達いっぱい欲しいからさ!もうこの際友達だよね!」
違った。ただ単に頭が少し愉快な人だった。でも、少し言葉をかわしただけの人とすぐに友達になろうという姿勢は自分ではありえないことなので、純粋にすごいと思う。多少の罵倒と尊敬の意を込めつつ、自分の名前を言った。
「黒子テツヤです。あなたは?」
「黒子君!わたしは宮牧まな!よろしくね!」
宮牧さんはきらきらとした笑顔でそう言い、手を差し出してきた。その手に自分のてを重ねたら、力いっぱいぶんぶんと腕を振ってきた。元気の有り余る人だ。
「じゃあ僕これからミーティングなので」
「ふーん?ひきとめてごめんね、またね!」
宮牧さんはホワイトボードを手で押しながら歩いて行った。
「さっき、面白い人に会いました」
「へ〜、どんな人?」
「ホワイトボードを車のように扱って廊下を走る人です」
「ふ〜ん、ただのアホじゃん」