短編

□eat
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「あっ、カカロット、今日も修行?」
「ああ、夕方には戻るかんな!」
「分かった、いってらっしゃい」

カカロットは毎日修行をしていて、遠くに出かける。
俺は昼食用に弁当を作っている。いつも泥だらけで帰ってくるものだから洗濯が大変だ。

「あっ!」

見送った後、リビングに戻ると…

「…あああ〜…」

弁当がテーブルの上に置いてあるのを発見。
…渡し忘れたようだ…。どうしよう、もう行ってしまっただろう。
それに、カカロットがいつも修行をしている場所なんて知らない。
……これはまずいぞ…。気を頼りに探すしかないな…

「ああ、一体どこにいるんだ?」

手ぬぐいで包んだ弁当箱を手に、空を飛びながら下を見下ろす。

「うーん……あっ!あそこか!」

ごつごつした岩や石だけが置かれている荒野。
風が強く、弁当箱を持つ手に力を込めた。
降りてあたりを見回すと、
大きな岩を持ち上げているカカロットが目に入った。

「カカロットー!」
「ん?あれっ、名無し!どうしたんだよ」

カカロットは不思議そうに、でもどこか嬉しそうな顔で言った。
岩を放り投げた数秒後、ズシンという大きな音と共に地面が揺れた。

「弁当、渡し忘れたから、届けに来たんだよ」
「あっ、そうなんか?サンキューな!」
*
「…ここでいつも修行してるの?」
「ああ、まあな。ここが一番修行しやすいんだ」
「そうかあ。あ、俺、邪魔になるから帰ろうか?」
「え?そんなことねえよ。ここにいろよ」
「あ…う、うん」

ちょっと返事が変になったのは、
カカロットが立ち上がろうとした俺の腕を引いたからだ。…ドキッとした。
*
腕時計を見るとちょうど12時だった。

「カカロット、そろそろ昼食にしたらどうかな」
「ん?ああ、そういえば腹減ったなー」

カカロットは食欲が凄い。だから普通の人よりも倍の量で作らなければならない。
ガツガツガツガツ

「…………」

いつ見てもすごい食いっぷりだ。
さすがに俺はこんなに多くは食べられない…。

「うめー!」
「それなら良かった」
「ん?これ、何だ?」

カカロットは、俺がコンビニで買ったシュークリームが入った袋を手に取った。
今日のデザートに使おうと思って買ったものだ。

「ああ、それはシュークリームだよ。今日のデザート」

カカロットは子供のように目を輝かせて、
シュークリームを一気に口の中に入れた。お…恐ろしい…。思わず息を呑んだ。

「うひゃあ、すげえうめえな!」
「う、うん…」

ん?あ、一気に食べたせいか頬にクリームが…。
…ってこれよくあるパターンじゃないか?テレビでもやっていた。
クリームついてるよって言ってそれを舐めるっていう…。恥ずかしくて出来ないが。

「カカロット、頬にクリーム付いてるよ」
「ん?どこだ?」

カカロットは手で頬に触れた。

「あ、もうちょっと下」
「ああ、これか!」

俺はカカロットがそのまま指でクリームを取って舐めるのかと思ったが…

「名無し、クリーム取ってくれ」
「…………え?」

予想は外れた。
……え?ちょっと待ってカカロット。君は俺に恥ずかしい思いをさせたいのか!?

「………な、何で???」
「えっ、駄目か?」
「いや、まず理由を教えてくれないと」

カカロットは「んー」と腕組をした後、

「名無しとは恋人らしいことしたことねえからだ」

…と言った。
………な、成程…と言って良いのだろうか。
でも確かに、まだキス…もしたことがない。カカロットの言う通りだ。
……うーん……。そういうことなら…やるしか、ないですよね…。

「…うん、分かった…」
「ほんとかー!?」
「…そんなに嬉しい?」
「おう!」

いや、満面の笑みで言われても。

「…じゃあいきますよー…」
「ああ」

ペロッ

「っう!」
「ご、ごめん!」

うわ、何だこれは…すごい恥ずかしい!!

「…や、やべえ…」
「え、な、何が?」
「ちょっと興奮しちまった。名無し、おめぇすげえやつだな」
「何が!?」

単に舐めただけじゃん!
…と言おうとしたけれど、カカロットが急に抱きついてきたせいで何も言えなかった。

「っ、カ、カカロット!?」
「何だか理性がおかしくなっちまった」
「は!?」
「じゃあオラもおめぇを興奮させるようなことすっぞ」
「え、いや、あの」
「大丈夫だ!そんな怖ぇ顔すんなよ!」

興奮して超サイヤ人になったカカロットの笑みは俺を恐怖へと導いた……。

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