短編

□devil
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devil

息を引き取った死体を蹴飛ばすと、
無様に転がって行き、血の色に染まった川へ沈んでいった。
ブーツに真っ赤な血がこびりついていて、水で洗おうかと思ったが
川は死体が数え切れないほど埋まっており、何しろ死体の流した血によって川はもはや真っ赤だった。
到底洗える気分ではない。

「名無し、終わったぜ」
「うん」

俺には名無しという恋人がいる。
俺はそいつと共に全宇宙を支配しようとしているところだ。
勿論名無しは最初は俺の冷酷な人殺しに反対したが、今は違う。
俺が名無しの心を支配しちまったからな…。

「もうここは用済みだ。行くぞ」
「うん」

心を支配しちまえば名無しは俺の言うことを何だって聞く。
愛せと言えばキスをしてくる。あいつを殺せと言えば容赦なく殺す。
だが俺は名無しにはあまり命令しない。
名無しは俺の愛しい恋人なんだからな…。
俺と名無しを邪魔する奴等はどんな手段を使ってでも殺す。
今はもう、全部殺しちまったから邪魔は入らないが。

「名無し」
「なに?」
「たまには何処か遊びに行かないか?」
「どうして?」
「戦ってばっかりじゃ、お前も疲れるだろ?」
「ターレス、それは俺のためなの?」
「ああ、そうだぜ、名無し…」

名無しの首筋に口づけすると名無しは顔を赤くした。
目を細めて、俺を見つめる。本当に可愛いな…名無しは。

「ターレス、ターレス」
「ああ、どうした?今度は唇がいいか?」
「うん、して」
「分かった。お前にならいくらでもしてやるさ…」

名無しは俺の腰に手をまわして目を閉じた。
俺は名無しの唇に吸いとられるかのように少し強引に自分のを重ねた。
厚い舌を入れると名無しの体がびく、と反応した。興奮しているんだな。

「ぷはっ」

舌を何度も何度も絡ませたせいか唾液が溢れ、口からこぼれた。
でもそれは名無しの唾液だ。
名無しの視線も気にせず唾液を全てなめとった。

「御馳走様」
「…恥ずかしいよ」
「フッ、…いつももっと恥ずかしいことやってるくせに」

耳元で囁いてやると、名無しは更に顔を赤くして目を逸らした。
全く、どうしてこんなに可愛いんだか。
こんなことならもっと昔から付き合っていればよかった。
…ああ、でも昔は邪魔者が居たし、まだ俺の力が強くなかったからな。

「そろそろ帰ろうぜ、名無し。続きはまた後でしよう」
「うん」

なあ名無し、
例えお前が心を取り戻し、俺を恐れて何処かへ逃げようとしたって無駄だからな。
抵抗しちまったらお前をお人形にしちまうかもな。
まあ、そうなることはまずあり得ないと思うがな。悪魔の俺からは、絶対逃げられないからな。
だから名無し、一緒に居ような。死ぬまで、ずっとずっと…。

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