短編
□許して
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ピルルルルルル
「うう…さっきから何なんだ…」
永久に鳴り続ける携帯電話を掴み取り
乱暴に電話に出て、「はい」と言おうとした瞬間、
「貴様いつまで待たせる気だ俺の怒りが爆発する前にさっさと来い!!」
キーーーン
うわっ、いきなり怒りの叫び声!
………ん?ちょっと待てよ………
「あーーーーーーーーーっ!!」
*
歯を磨く事も顔を洗う事も忘れ服装も本当にこだわりもなく適当に選び
身支度もきっちり整える暇もないまま彼の待つ場所へひたすら走った。
「はひー……はー…ゲッホゲホッ」
こんなに体力を使ったのは久しぶりだ。
そして到着した瞬間いきなり胸ぐらを掴まれた。
「貴様、俺を3時間も待たせるとはいい度胸だな、え?
来ると信じて待ってやる俺も優しいもんだ、助かったなあ名無しさんよ」
「ご、ごめんなさい…その、明日だと勘違いしちゃって…」
「ぶっ殺されたいのか」
「うわ、ご、ごめんなさいごめんなさい!
ビックバンアタックで消すつもりか知らないけど許して!本当に勘違いしてたんだ!」
と、そこで胸ぐらを掴んでいた手がぱっと離れた。
不意打ちだったので俺は地面に背中と尻をぶつけて倒れた。うう、痛い。
「第一誘ったのは貴様だ。俺は何も悪くないからな」
「うん…分かってるよ」
痛む背中を片手でさすりながら苦笑。
そうだ、元々デートに誘ったのは俺。でも王子は、デートを明日だと勘違いして爆睡していた最悪野郎な俺を
3時間も待ってくれていたというんだ。沢山お礼しなきゃ。
「何かおごるよ。お腹空いてるでしょ?」
「待っている間、腹が減ったからそこらの店で食った」
「………わかりました…」
なんてこった…王子は完全に不機嫌モードだ。
恐らく彼のイライラ度は99.9%であろう。(俺の予想)
どうしよう…あと0.1%増えたら街が、都が、いや地球そのものが消し飛ぶ!!
「あ、あの、王子?」
「………」
に、睨まないで下さい…。怖いです…
「ど、どこか…遊びに行きましょっか…?」
「今はそんな気分ではない」
いやあああああ!!これはもうアウトだ…!
なすすべなし…もういっそこのまま帰ろうか?いやそれでは解決しない!
「王子…どうしたら、怒りが収まりますか…」
「………」
ちら、と横目で見て、考え込む仕草をする。
「じゃあ、お前からキスしてくれたら許してやる」
…………はい?
え、つまり、大勢の人々が歩いている都の中で、キスをしろと?
恥ずかしい思いをさせたいのでしょうか。
「……………え、ええと…、別の場所でしまし「断る」……………!!」
うわああああんひどいよ王子ぃ!!
「うう…わかった…」
ここで王子のイライラ度が少し下がったような気がしたのは気のせいだろうか。
…いや、それよりも、早くキスを済ませないと…。
「……」
数歩歩いて王子の目の前に。
「んっ」
ちゅっ
一瞬だけ…一瞬だけなら見つからないだろう、と思っていたら。
王子が逃げよう(後ろへ退こう)とする俺の腰を掴み、ぐっと彼の方へ俺の体が寄せられてしまった。
よってキスは延長。…絶対見られてるよこれエエエエエ!!
「ん、んむっ、うう」
王子の手を強く握ると、苦しいことを察してくれたのか
強引だが唇を離してくれた。…何だか口の中が熱い…。
「王子…」
感触が忘れられなくて頭が熱くなり、ぼうっとした。
王子のイライラ度は多分、今は0だ。…今ので満足したということなのだろうか?
「ふん、まあこれくらいで我慢してやろう」
え?これくらいで我慢って…どういうことだ?
「おい名無し、ついてこい」
「あ、うん」
この時、後から王子と激しいキスをするだなんて、知る由もなかった…。