短編
□罰ゲーム
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「はいベジータ、これ着て!」
「…く、くそったれめ…」
何故かトランクスが俺とゲームで勝負をしたいと言ってきた。
格闘での勝負ではなくゲーム…?と疑問に思ったが、とりあえずやってみることに。
そこでトランクスは言った。
『負けたら罰ゲームだよ!』
ルールや操作方法を学んで、簡単そうだったから勝てるだろうと思っていたら、
普通にあっさりと負けてしまった。
罰は何にしようか迷ったトランクスはブルマに決めて欲しいと言った。
この際何でもやってやるとイライラしながら待っていると、
ブルマが何か女が着るような服を持ってきた…。
そして今、俺は何故こんなものを着なければいけないんだと呆気に取られながら、舌打ちして服を受け取った。
着るだけならまだいい。ブルマはそれを着たら、と言って、
「名無しに見せてきなさい」
なんてことを言いやがった。
「な、なな…何だと!?」
冗談じゃない。こんな服を着た状態で奴に会いに行けだと?
奴の青ざめた、ドン引きした顔が想像できる。
「ふ…ふざけやがって…」
だがこれは罰ゲーム。
逆らったりすれば、自分にとってさらに恥をかく、酷い命令が下される筈だ。
今の俺の服装を詳しく説明すると、
黒のワンピースにフリル(というらしい)が沢山付いて白いエプロンの組み合わせという
やはり女が着る服装であった。とても気味が悪い…
「くっ…」
顔が熱くなり、空を飛んで急いで名無しの元へと向かった。
*
ドンドンドン
名無しの家まで飛んできて、急いで降り立つ。
そしてドアを強く、早く叩いた。
ずっと此処に居ては見られてしまう。いや、向かっている最中も見られていたかもしれない。
周りの奴等からは女の格好をした男が空を飛んでいる風に見えるだろう。
俺は昔から名無しの家にやって来る時はドアを3回叩く。
それは俺が来たという合図で名無しもしっかりと理解している。
「はい」
唇を噛み締めて、開くドアを見つめる。
視界に移った名無し。
俺を見た瞬間…
「ブバッ!!」
想像を遥かに越えた行動をしやがった。
なんと奴は、鼻血を出したのだ…。
*
「そうか…そうだよね、自分の意思で着る訳ないものね」
ティッシュで鼻血を拭き取った名無し。どうやらちゃんと納得したようだ。
「でも似合ってるよ」
「なっ、何を言っている!男が女の格好をして…なぜ似合っていると言える?」
「とっても可愛いよ。頭につけてるカチューシャも似合ってるし」
「っう…」
何故だ。気持ち悪くないのか。こんな姿の俺を見て引かないのか。
やっぱり名無しは…優しい。
「馬鹿…」
「えっ?なに、変なこと言った?」
「…てっきり俺は…気持ち悪いと、言うのかと…」
名無しは、当然のように首を振る。
「そんなことないよ」
「………」
そんなこと、言われたら…
「………うれ、しい…」
「あはは、王子ったらどうしたんだよう」
「う、うるさい。貴様が想像とは違った反応をするから驚いただけだっ」
「本当のことを言ったまでだよ?」
「〜〜〜!くそったれが!」
可愛くて仕方がない名無しを乱暴に押し倒した。
「はは…王子の呼び名、『くそったれメイド』にしようかな?」
「なっ、何だそれは」
「あはは、冗談だよ。もう着ないんでしょう?それは罰ゲームだから着ただけなんだし」
「………貴様はこの格好をどう思う?」
「え、可愛いと思うけど」
「……なら、時々着てやろう」
「本当?」
「ああ。ただし、街中でこの格好は当然無理だから着ん」
「うん…俺だって恥ずかしいよ」
「チッ…。本当はお前に見せたらすぐに帰ろうかと思ったが…やめた」
「どうして?」
「面白い事を思い付いたからな…」
名無しにも、これを着させてやろう…
ニヤリと笑った俺を、名無しはただ首をかしげて見つめていた…。