短編

□不思議な彼氏
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「せんぱぁい、構って構って〜おねが〜い」
「もうちょっとで終わるから待って」
「えー…」

悟天は名無しの一つ下の後輩だ。
子供っぽい一面を見せたり、たまに真面目になったりでよく分からない人物である。

「せんぱーい、聞いてる?」
「聞いてるよ。何?」

悟天は椅子に座りながら、足をぶらぶらさせていた。
図書室で二人きり。悟天にとっては二人きりなんて、めったにないのだから嬉しい。
だが、名無しは悟天に構ってくれない。

「むう…」

頬を膨らます悟天だが、相変わらず反応はない。

「ねえー先輩、毎日勉強ばっかりしてるけど、疲れないの?」
「疲れないよ。悟天、お前はもう来年から受験生なんだから、遊んでばかりいないで勉強しなさい」
「…はあー」
「頑張ればいいことあるよ」
「…キスしてくれる?」
「さあ、どうだろうね」

悟天は目を輝かせた。

「あ、そうだ、先輩。デートはいつにする?」
「…あれー悟天君、勉強しろってさっき言った筈だけど???」

名無しは悟天のこういう所が嫌いである。
悟天は昔から女子に人気で何回もデートをしたことがあるようだ。
だが彼は、本命は名無しだ、と言って周りの女子達を一気にフったのであった。
まあ、今でも女友達は多いらしいが…。
何度も悟天に告白され、名無しは困り果てていた。フったのに再び好きだと言われたのだから…。
そして悟天と気づけば恋人になっていた。

「あのさ、今更だけど、自分のどこに惹かれたの?」
「えっ? そりゃあ決まってるじゃん! 全部だよ!」

照れもせずにきっぱりと言い切った悟天。
名無しはそこが悟天の凄い所だなあと思った。

(俺だったら絶対言った後に赤面するなあ)

「…でも、俺以外にも言ってそうだなあ」
「そんなことないよお、僕は先輩一筋だもの」
「…分かった分かった。はい、終わったよ。帰ろうか」
「わーい! 先輩お疲れ様ーご褒美にキスを「いいです」ええーっ!?」

本当に不思議な人だな…と名無しは密かに思うのであった。





「ねえ先輩。夜電話してもいい?」
「何で?」
「最近先輩がちょっとでも離れると寂しくなるんだ。でも声を聞いてれば安心すると思って」
「…はは、分かったよ」
「ありがと!じゃ、またね!」



「…俺もかも、悟天」

名無しはぽつりと呟いた。

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