短編

□好きになっちゃいました
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「名無しさんはベジータさんと仲がいいんですね」
「え、いや…そんなことないよ」

今、俺のすぐ横で一緒に座っているのは、
つり目でベジータのように髪型が逆立っている、皮で出来た鎧のような服を着た男の人。名をキャベ、という。
俺よりも背が小さくて、(失礼だけど…)サイヤ人とは思えないくらい礼儀正しい。
実は彼、第6宇宙のサイヤ人らしいんです。惑星サダラを拠点としていて、しかも、第6宇宙のサイヤ人たちは皆が正義の味方の善人…。
俺達とはぜんぜん違うみたいです…。

「えーっと…あの、キャベ君…あ、いや、キャベ様…」
「普通に呼び捨てでいいですよ。何ですか?」

何だかどう接すればよいのかわからず、俺はカチコチになりながら声を掛けた。
同じサイヤ人だけど、何と言うか…。礼儀正しいサイヤ人なんて天と地がひっくり返ってもいないような気がするし。

「ベジータのことどう思う?」

変な質問しちゃったよ…。
キャベ君は小首を傾げた後、「そうですねえ」と言った。

「まだよくわからないです。あまり話したことがないので」
「そうかあ…」

じゃあ俺はどうかな、と恐る恐る聞こうとしたとき、

「名無しさんは接しやすいです」

先に答えを言われてしまった。
えっ、というか、接しやすいって…こんな俺が?

「ほんと?」
「はい」
「ほんとに?絶対ほんと?」
「はい」
「そ、そっか…ははは、嬉しいなあ」

もしかしてキャベ君って人の心読めるんじゃ…。ヒイッ。

「おい、名無し」

などと思っていたら、後ろからベジータの声が聞こえてきた。

「そろそろ帰るぞ」
「あ、ああ、わかった」

あわてて立ち上がると、不思議そうな顔でキャベ君は俺を見つめた。
変な人だと思われてるよね、きっと。いや、絶対。

「そ、それじゃ…また」
「はい、さようなら」

そのままベジータについていこうとしたら、キャベ君が俺の腕を掴んだ。

「?」
「名無しさん、また会いましょうね」

ちゅっ

「!?」
「ふふっ」

にっこりと微笑むキャベ君…そして、頬にやわらかい感触…
キスされたんだと分かるまでに数秒かかった。
俺は顔が火照っていくことに気づき、それを隠すようにしてキャベ君に背を向けて逃げた。








「貴様、浮気か?」
「は!?何が!?別に俺達付き合ってないじゃないか」
「…チッ!」

ベジータは見ていたらしい。キャベが名無しの頬にキスしていた光景を。
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