短編

□戸惑う彼
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「はあああああ…」

さっきから溜め息しか出ない。別に疲れている訳ではないけれど…。
今日もキャベ君と会う予定なんだけど、この前のことを思い出すと、会いづらくなってしまう。
そう、あの時俺はキャベ君に突然キスされたんだ。唇じゃなかったからまだいいんだけど…。
嗚呼、そのことを思い出すとまた顔が熱くなってしまう。

「でも、会って話もしたい…ああもう!」

このまま会いに行ったら怪しまれること間違いなし…
はあ…一度風呂に入って、気持ちを落ち着かせた方がいいかもしれない。




風呂から上がると、リラックスできたので胸をなで下ろした。
これなら大丈夫だ。キャベ君、もう先に来てるだろうか?




「ごめん、待ったかな?」
「いえ。大丈夫ですよ」

キャベ君はにっこり微笑んでそう言ってくれた。


二人でしばらく歩いていると、キャベ君が突然立ち止まった。疲れたのかな?

「名無しさん」
「何?」
「少しかがんでもらえると、有り難いのですが…」
「え?何をするの?」
「いえ、決して怪しいことではありません…」
「…?わかった」

言われた通りにすると、顔を赤くしながらキャベ君は再び口を開いた。

「あと、目も瞑ってくれると…」
「う、うん」

一体何をするつもりなんだろう?
キャベ君はそれ以上は何も言わなかった。俺も黙ってこの姿勢をキープする。

「名無しさん………好きです…
「えっ?…んっ」

最後の言葉が聞き取れなくて、何て言ったか聞こうとした時…
唇に何かが重なった。言うまでもない…重なったのは、彼の唇だ。

「あ…あの…俺はどうすればいいのかな…」
「…!すっ、すみませんっ!ボク何して、はわわ!」

とても彼の声とは思えないくらい高く、叫びに近い声が聞こえてきた。
もう目開けてもいいかな…と思いながら、ゆっくり目を開けると、彼は真っ赤な顔をして両手で顔を覆っていた。

「……変なことをしてしまってすみません…」
「いや、その…」
「ボク、名無しさんが好き…なのかもしれません…」
「えっ」
「だ、だって…貴方の顔を見ていると…あ…嗚呼…」

キャベ君は細い眉をへにゃへにゃに下げると、目をくるくると回し突然倒れてしまった。

「キャベ君!?」






キャベはその後、高熱を出し、名無しに看病されたのであった。

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