短編
□happy
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深夜、突然隣で寝ていた名無しさんが身体を起こした。
僕はちょうどそのとき目を開けていた(眠れない)ので、すぐに気づいた。
「どうしたんですか?」
「はわっ!ご、悟飯君起きてたんだ…」
「眠れないんですか?」
「うん…」
「そうですか…僕も同じですよ」
寝られないときは、外に出てみればいいかもしれないと名無しさんが言ったので、
その案に賛成し、僕らは家を出た。そして上を見上げれば、満天の星空。
名無しさんは目を輝かせた。けれども、僕は星空よりも名無しさんに夢中だったから、星空は全く見ていなかった。
腰を下ろすと、名無しさんは体育座りでじいっと星空を見つめていた。
僕はなんとなく星空に嫉妬した。さっきから全然僕のこと見てくれないし…。
「綺麗だね…」
そう言った時、ようやく僕のほうに顔を向けてくれた。
…まあでも、横顔を見るのも悪くないんだけれど…。
「すみません、名無しさんを見てたから、綺麗かどうかはわかりません」
そう言うと、名無しさんはじわじわと顔を赤く染めていった。
ふふ、やっぱり彼って面白い。いや、可愛いの方が大きいかな。
「ご、悟飯君!」
「ははは、名無しさんったら、いい加減慣れてくださいよ」
「〜〜〜!」
「まあ、本当に貴方しか見てなかったから、冗談なんかじゃありませんけどね」
「…悟飯君は意地悪だなあ」
「そうですか?」
名無しさんに身体を寄せると、彼の耳の付け根まで真っ赤になっていくことに気づいた。
「…このまま時間が止まってくれればいいのにな…」
「同感です」
そうしたら、名無しさんに意地悪することも出来るし、くっつくことも出来るし、ずっと話していられるし…
「悟飯君」
「はい」
「だいすきだよ」
「!…ええ、僕も好きですよ」
名無しさんがにっこりと笑うと、僕は胸がきゅんと締め付けられた。
僕は彼の笑顔に弱い…。ああ、本当にこのまま時間が止まって欲しい。
「二人きりになれる時間って、少ないですよね…」
「うん…だから余計に時間が止まって欲しいって思うんだ」
「…はい」
せめて、この時間だけは、貴方を独り占めしたいです。名無しさん。
「名無しさん、僕ら、きっと朝起きれないですよ」
「はは、そうだね」
「でも…いいや。幸せだし」
貴方と居られれば、夜更かししたって朝寝坊したって構わない。
それだけ貴方のことが好きだから、貴方と二人きりで過ごす時間が幸せだから。
「悟飯君」
「はい、何ですか?」
「キス、してほしいんだ。…だめかな?」
「…そんな顔で言われちゃ、断れないな…」
長いキスを落とし、僕らは気がつけば眠っていた。