短編2

□念願の夢
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「ヤムチャさーん」
「おおー名無しじゃん」
「えへへ。奇遇ですねえ」
「はは。またなにか困り事か?」
「なはは〜その通りでござます」

そっか。……また、アイツとの事か……。

俺は名無しの幼馴染だ。前から俺は名無しが好きだったが、
名無しにはもう恋人が出来ていた。
最初はめちゃくちゃ落ち込んだけど、今はもうだいぶ受け入れられるようになった。
俺は名無しを応援する事にした。だから、親友として相談をされるようになった。
勿論俺は名無しを困らせたくないから相談されてはいつも何かとアドバイスをしている。
でも最近は何だか相談の回数が多くなったし、内容もだんだん難しくなってきていた。

「んで、なんだ?どうしたの?」
「実は」

今日は何の相談なんだろうな……。

「別れました」
「………はっ!?」

覚悟して構えてたのに、出た話題が「別れた」!?

「すみません。いきなりでしたね」
「う、うん……ホントにいきなりだな。でも、どうして?」
「いやあ……あの人……浮気してたんです」
「浮気……」

何で?何でこんなに可愛い恋人をほうっておいて別の男に夢中になるんだ?
俺には疑問だった。

「それが分かって、俺、嫌になって。手紙だけ置いて逃げたんです」

名無しは何故か悲しそうではなかった。
どうしてだろう?別れてすっきりしたのか?

「名無し、……腹立ったりとかしないのか?」
「しませんよ。だって、俺元々あの人好きじゃなかったんです」
「えっ」
「あの人がしつこく付き合えって言うものだから、嫌だって言ったら暴力振るわれそうで……」

なんだよ。脅迫じゃないか。
最低だ。最悪だ。
あんな奴と付き合わされてた名無しが可哀想だ。

「もういいんです。俺、これからはちゃんと良い人と付き合います」
「……そっか。じゃあ、出来たときはまた……相談しろよな」
「いえ。その必要はないです」
「え?」

どうして?

「だって、ヤムチャさんと付き合うんだから」
「………えっ、えっ、ええ!?」

お、俺?じゃ、じゃあ…俺の夢はかなったわけか?

「俺、本当はヤムチャさんが好きだったんです!実は……相談を何回もしていたのは、
ヤムチャさんと話したかったから…会いたかったからなんです……すみません……」

今、多分、俺は呆然としているだろう。あまりにも、色々唐突すぎて信じられない。
……嬉しいけどさ。

「……だ、だめですか?」
「……いや……。嬉しくって」
「え、じゃ、じゃあ」
「俺も……好きだぜ。ずっと前からなんだけどな……」

そういった瞬間、名無しが抱きついてきた。

「うわっ!?……名無し?」
「やったあああ!ヤムチャさんとやっと付き合える日が来るなんて〜!」
「お、おう……?名無し……ひ、人が見てるぞ?」
「そんなことはどうだっていいです!念願の夢が叶いました!わーい!」

まるで玩具を買ってもらった子供のようにはしゃいでいる名無しを見ていると
俺も何か移ったみたいでひたすらはしゃいだ。
……周りからは変な目で見られたけどな。

「えへへ。実は、ヤムチャさんと恋人になったらしたかった事があるんですよね」
「え、なにそれ?そんなのあるのか?」
「はい。……こんな感じで」

名無しは俺にぴったりくっついて俺の腕と自分の腕を組んだ。

「う、腕組みか?」
「はい」
「なーんだ……チューかと思ったのにな……」
「キスは……その……恥ずかしいですよ」
「街中で腕組むほうが恥ずかしいぜ」
「あっ、い、今言った事、五、七、五っぽかったですよ!」
「誤魔化すなよ……」

それでも俺たちは家に帰るまで腕を組んでいた。

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