短編2

□猫耳パニック
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名無しはいつも変な薬ばかり開発する友人から新しく開発した薬を貰った。
名無しは実験体と言うようなもので常に薬が開発されるたびに渡されては飲まされている。
何が起こるのかは飲んでみなければわからないため、名無しは何度か大変な目にあったことがあるのだが、
友人のためならと思い仕方なく今回も引き受けたのであった。

「ただいま」
「おかえりー!」
「どわーっ!!」

家の中に入った瞬間、リビングから悟空がものすごい勢いで走ってくると抱きついてきた。
倒れそうになりながらも何とかこらえて、名無しは悟空の背中をたたく。

「ば、バカヤロ!いきなり何するのさ悟空!あー、びっくりした……」
「すまねぇなー、でも早く帰ってこねえ名無しがわりぃんだぞ」
「ご、ごめんごめん……。……疲れたからちょっと昼寝するね。昼御飯は起きたら食べるから」
「ん、そっか。ゆっくり休めよ」
「うん。ありがとう」

部屋に戻ると名無しは、
コップに水を注ぎ薬を口の中に放り込んだあと、水をぐいっと飲み干した。
それから効果が出るのを待つこともなく、名無しはベッドに倒れるとそのまま眠りに落ちた。





「……名無し、名無し!起きろって」
「……んー……なんだよ、悟空……」
「おめぇ、頭に変なの生えてんぞ」
「…………へ?」
「鏡見てみろ、びっくりするぞ」

名無しはゆっくりと身をおこし、近くに置いてあった手鏡を手にとり確認した。

「…………な、なんじゃこりゃああああああ!!」

ぴょこんと頭に生えていたのは猫耳だった。
どうやらこれが薬の効果らしい。名無しはひそかに、変態化していく友人の姿を脳裏に浮かべ憎んだ。
ふと、尻の方に違和感を感じ見てみると、尻尾が生えていた。完全に猫だ。

「ひゃー、すげえな、これ。どうなってんだ?」
「……薬の効果だよ」
「クスリ?」
「……何でもない。……はあ……こんなんじゃ外に出れないよ……」
「なあ名無し、これ、本物なんか?」
「えっ、ちょ……!」

興味津々の顔で悟空はぴょこぴょことせわしなく反応する猫耳に触れた。
すると、名無しは体全体が震えると同時に無意識に声が出た。

「にゃっ!」
「うわ!?」
「…………」

名無しは一気に顔を赤く染めると俯いた。
変な声が出て恥ずかしくなったためだ。

「……ごめん。……今……変な声出た……」
「変じゃねえって……じゃあさ、尻尾はどうなんだ?」
「……ん、ひっ!」

びくびくと体が勝手に反応し、
名無しはへなへなと力を失い、悟空の服を掴み彼の方へと倒れこんだ。

「あ……はあ、駄目……だってば……」
「なあ、名無し……にゃーって鳴いてみろよ」
「あ、ふああ……にゃ、あ……」

悟空は尻尾を強く握り、ふにふにと指の力に強弱をつける。
同時に、興奮し反応する猫耳を口にくわえると名無しは更に力を失う。

「……ひ、あっあ……にゃあ……」
「……さっきクスリのせいとか言ってたけど、誰かから貰ったんか?」
「……ん、うう……とも、だちから……もら、って……にゃ、ふぁ……う……」
「そうか。なら、その友達って奴に感謝しねえとな」

こんな可愛い名無しの姿と声を聞けるんだからな。
悟空はそう呟くと口角を上げて、今度は猫耳を舌で舐めて弄ってみせた。

「あっ、あ……っ、ご、く……も、むり……」
「……ん、名無し、可愛いぞ」
「ひ、ああ……にゃああ……」
「……ほんと、たまんねえな」
「…………っ、く……やめろって……」
「……?」
「言ってるだろうがああああああ!!」

ふと手を休めた瞬間。その隙を狙って名無しは悟空の腹を全力で殴った。

「い、いってえ!」
「こ……この、スケベ!今日は一緒に寝てやらないからな!」
「え……あ、おい!名無し!」

名無しは耳の付け根まで真っ赤にしながら、ドアを乱暴に開けると部屋を出ていった。





名無しはそれから友人の頼みを引き受けなくなったそうだ。

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